3年ぶりの杉沢比山「本舞」
「杉沢比山」の「本舞」が3年ぶりに、規模を縮小してですが開催されました!
近年はコロナ禍で神事のみ行われていましたが、今年は嬉しい開催でした。移住してから初めて見るので楽しみです。
遊佐町の南東部の鳥海山麓にある蕨岡地区の杉沢。山間部にある集落で、古来より山岳信仰が発展してきました。
周りには田んぼや庄内柿畑が広がり、「杉沢土偶」が出土した縄文時代の遺跡もあります。(撮影日8/19)
杉沢土偶の記事はコチラからどうぞ 遊佐は縄文遺跡たくさん!
杉沢比山は熊野神社に伝わる番楽で、もとは修験者が舞っていたといいます。(番楽:山伏が伝えた神楽のこと。太平洋側では山伏神楽、日本海側では番楽という。青森、岩手、秋田、山形の修験道の広まった山麓の村々に広く伝わっています。)
通常であれば8/6「仕組」、15「本舞」、20「神送り」と、お盆の時期の三晩に舞が奉納されます。本年は8/15の「本舞」のみとなりました。曲目数は例年より少ないとのこと。
過去記事はコチラからどうぞ 2017年 本舞、2021年 神事
のぼり旗にぼんぼりに提灯と、お祭り仕様の熊野神社。3年ぶりとあっていいですね。
日中には大雨が降り、舞台での開催が心配されましたが、見事に雨が止みました!良かったです。
何日も前から、拝殿の前の舞台も設置されていました。舞台には丸木の欄干、上部に注連縄と提灯、左右に忌竹が添えられ、畳6畳が敷かれています。
18時半頃に神事を行い、御頭舞が奉納されました。
動画もご覧ください。
19時頃に開始を告げる「かけ謡」が幕内から歌われ、いよいよ杉沢比山の舞の始まりです。囃子方の口上、唄、太鼓大・太鼓小、笛、銅拍子に合わせて舞います。
杉沢比山では幕の後ろで奏でられます(他の地域では横に出ているそうです)。囃子方は直接見ないで奏でるので、経験が必要とされベテラン勢が担っています。全ての舞が判ってなくてはならないそう。
また、太鼓の打ち手が1人で大・小の二つを使うのは杉沢比山だけだそうで、独特の軽妙なリズムを刻みます。
舞も演目一つ一つに独自の所作が見られるなど、他の地域の番楽と比べて違いがあるそうです。
楽曲のリズムとメロディーは洗練され、美しい型など舞手の鮮やかな手足さばきは杉沢比山の見どころです。
「三番叟(さんばそう)」五穀豊穣を祝う舞。拍子が早く、足拍子の動きが大きい。代々少年が舞っている。(他地域の番楽では大人で装束も異なる)
リズムに合わせて華麗な足さばきです。
「景政(かげまさ)」平安時代後期、前九年の役で八幡太郎義家(源義家)が、奥州で朝廷に反旗を翻した安倍氏を征伐。厨川の城で義家の家来、鎌倉権五郎景政が安倍宗任に左眼を射られた。景政は矢を抜かず3日も探し求めその矢を射返したという勇戦を讃えた舞。
最初に景政が、次に安倍宗任が登場し、刀を抜いて戦う場面を展開する。
ポーズも凛々しく決まっています。
扇を使った舞から、刀を使った舞へと変わっていきます。
刀を使った舞です。
「みかぐら」雌雄2羽の鳥の舞。鳥兜をかぶり、振袖に帯を垂らした装束で、鈴と扇を持って左右対称に舞う。水色の振袖が雄どり、赤い振袖が雌どり。
「鳥舞(とりまい)」みかぐらと同じ装い。高天ヶ原の天の岩戸が開かれたときに、雌雄2羽の鳥が夜明けを告げてたわむれる様子。複雑な舞の構成となっている。
皆さん境内に集まっています。椅子を持参してじっくり見る人も多数。親子そろって子供たちも楽しそうに見に来ていました。
「翁」天地長久、五願円満、息災延命を祈って踏み鎮めをします。荘重な舞。中世の能の要素が残っているそうです。
「大江山」平安時代中期、源頼光と渡辺綱が大江山の酒呑童子(鬼)を退治する物語の一場面です。二人が大江山にさしかかると花園中納言の姫に出会います。姫から鬼のありかを聞き出していると、この様子を見ていた茨城童子(鬼)が襲い掛かってきます。その鬼を退治します。
茨城童子(鬼)の登場です。
三人とも同じ型に舞いますが、鬼は型を崩して荒く舞います。やがて鬼は追い込まれます。
最後は刀を鞘に納めて扇で舞います。
「猩々(しょうじょう)」猩々は酒の好きな想像上の動物です。赤い装束の猩々役の舞手が抜き身を切ったり、でんぐり返りをしたり、刀をくわえて逆立ちしたり、曲芸的な演技を見せます。
扇を使った舞です。
刀を使った舞です。
いよいよクライマックスです!拍手喝采で幕が終わります。
杉沢比山の法被もかっこいいんですよね。思わず後ろ姿をパチリ。
皆さん、いい公演をありがとうございました!素晴らしい舞を見ることができました。来年は3日とも無事に舞が奉納されますように。
機会があれば、ぜひ観覧にお越し下さいね。
追記ーーーーー
継承のために、「比山体操」が地元の蕨岡小学校で行われています。
舞の基本動作を組み込んだ体操で、舞に近い身のこなしができるよう工夫されています。
昭和40年に考案され、運動会等で披露しています。
ずっと続いているんですね!親子でできるそうです。
出典・参考図書
『杉沢比山』パンフレット sugisawahiyama.pdf (yuzachokai.jp) (PDFで開きます)
『重要無形民俗文化財杉沢比山資料集』遊佐町教育委員会 1981
参考Web
Cradle クレードル 出羽庄内地域文化情報誌 2018 7月号 No.48「特集 杉沢比山の夏」
http://www.cradle-ds.jp(バックナンバーからご覧頂けます)