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上寺祭り~鳥海山大物忌神社 蕨岡口ノ宮 例大祭~

2023-05-23

/ by kaori

 

鳥海山大物忌神社 蕨岡口ノ宮 例大祭」が4年ぶりに開催されました!

近年はコロナ禍で神事のみ行われていましたが、今年は嬉しい開催となりました。

 

大御幣祭(だいおんべいさい)」といい、毎年5/3に行われます(通称「上寺祭り」)。五穀豊穣と鳥海山の安寧を願い、「御幣行事」と「蕨岡延年の舞」(山形県無形民俗文化財)が奉納されます。

 

大御幣祭・・・鳥海山蕨岡の修験者が大先達になるために行われた最大の胎内修行の中心となる行事で、例祭のほか、奉遷祭、神宿祭、大御幣行列、還御祭、蕨岡延年が行われます。

蕨岡延年・・・修験道の修行の一環として室町時代から行われてきた舞で、舞楽系と児舞系で構成されます(県指定無形民俗文化財)。

 

鳥海山は秋田県と山形県の県境にあり、古代より信仰の対象として崇拝されてきました。鳥海山は活火山で、噴火などの異変が起こると鎮祭が行われました。

鳥海山大物忌神社は※出羽國一之宮で、山頂の「御本社」、山麓の「蕨岡口ノ宮」「吹浦口ノ宮」の3社からなっています。※出羽国(現在の山形県と秋田県にほぼ相当)※一之宮(ある地域の中で最も社格の高いとされた神社)

 

 

過去記事はコチラからどうぞ

鳥海山大物忌神社 例大祭「蕨岡口ノ宮」「吹浦口ノ宮」(2021年)

5月3日は上寺祭り!(地元の人は上寺祭りと呼んでいます。)(2017年)

遊佐町民俗芸能公演会(2022年)

蕨岡口ノ宮」は遊佐町の南東部の蕨岡地区にあります。古来より山岳信仰が発展。歴史や多くの文化財、地域行事が大切に伝承されています。大変見どころが多い地区です。

 

蕨岡修験道ウォークの様子(2022)はコチラからどうぞ

蕨岡地区の史跡 ゆざの史跡・パワースポット巡り→蕨岡地区の所をご覧ください

松岳山の中腹にある「鳥海山大物忌神社 蕨岡口ノ宮」。

神社周辺の上蕨岡地区は丘陵の上に開けた集落で、通称「上寺」と呼ばれ、蕨岡修験者の拠点になっていました。

かつて鳥海修験道で栄え、江戸時代には最大の勢力を誇り、三十三坊を有する宿坊集落でした。現在も宿坊の景観が残っており、その当時の様子を偲ぶことができます。(登拝者は宿坊に泊まり、登拝道をたどって鳥海山山頂へ向かった。)

大鳳館

当日の朝、大御幣立てが行われます。神宿である大鳳館の入り口に立てます。長さ5.4mの2本の青竹が使われています。

 

鳥海山蕨岡修験者は10カ月(8月~5月)に及ぶ胎内修行と呼ばれる籠りの修行を行っていました。

その中心となる3月に行われていた行事「暁の御幣立饗」と「笈緘饗」が現在の大御幣祭です。

御幣行事の由来(『蕨岡魅どころ案内』より)

荒ぶる神と言われるスサノオノミコトがオオゲツヒメから五穀の種を受け取り、姉日の神と兄月の神に献上し、日本国中の主食に普及するという「古事記」を現したものである。
御幣はオオゲツヒメ、剣先は日の神・月の神、剣先を抜くのはスサノオノミコトがオオゲツヒメより五穀の種を奪い取ることを現している。

 

 

 

先に、祭の前の準備の様子を見に行ってきたので紹介します。

約1週間前 大御幣のやぐら作り

縄で縛っていき、やぐらを作ります。皆さん4年振りとのことで確認しながらされていました。

ベテランから教わっている若者もいて頼もしいです。

4/30 御幣、造り花作り 皆さん集まって祭りの準備を行います。

大御幣の2本の青竹を縄で縛ります。先端に剣先を差し込みます(太陽に見立てた鏡、月に見立てた赤い丸のついた扇)。

御幣作り(男性陣の担当) 前もって紙を切って用意しておきます。

紅白の水引で結びます。結び方もどうだっけ?と確認しながらの作業。

大願主として寄付をしてくれた方にお札と共に渡します。

造り花作り(女性陣の担当)

竹の棒に色テープを斜めに巻いて、花を5枚付けて完成。華やかですね~。

皆さんで一つ一つ丁寧に作られていました。以上、準備の様子でした。(^^)

 

 

 

いよいよ、祭の様子をお届けします。

ニノ鳥居の前です。奥は随神門(国登録有形文化財)

午前中に「例祭」が行われます。午後の「奉遷祭」から行ってきました。

蕨岡口ノ宮 本殿(国登録有形文化財)

奉遷祭」神様を迎える神事が行われます。

神事を終え、天狗を先頭に大鳳館へ向かいます。

天狗のお面かっこいいのですが、下が見えないそうで階段を下りる時は支えてもらっていました。

また高下駄で、よく見ると一本歯!天狗は一本歯下駄なんだそうです、知らなかった~。

一本なので通常の下駄より立つ・歩くのが難しいそう、ひぇ~天狗様スゴイ!!

 

動画でご覧ください。

 

 

神宿祭」到着次第、大鳳館で行われます。

御頭神事

 

 

 

巫女舞

 

 

 

神事が終わると皆さん外に出ます。

八人若勢と呼ばれる若者の集団が大御幣を引き出しにやってきます。勢いよく血気盛んに駆け込んできます。(当時は祭ならではの、お酒を飲んで若者が騒いでいいという意味合いもあったそう。)

それをさせまいとする集団とぶつかり、何回も揉みあいを行います。

 

三人の剣先(写真右側)が先端についた剣先(扇)を護ります。

かつては大御幣の紙垂(しで)を剣先と共に人々が競って奪い合ったそう。紙垂を水田の水口に挿して稲の豊作を願ったとのこと。紙垂は稲の種を表し時には雨を表す。

私は道に落ちていた紙垂を頂きました。(^^)

勢いのよさに初めはこれは何事か?!と驚きますが、見ているとおしくらまんじゅうみたいで楽しそうでした(笑)。迫力が醍醐味です、これぞ祭ですね!

いよいよ大御幣を引き出します。

 

動画でもご覧ください。

 

 

大御幣行列」 天狗を先頭に神社へ向かいます。

若勢は大御幣を抱えたりしながら向かいます。本来は立てたまま引きずって行くのですが、今回は人数不足の為かついでいます。

紙垂と剣先とを奪い合っていた当時、少しでも傾くと取られてしまうので取られないようにと立てたまま運んだそうです。

 

大御幣は途中で何回かまっすぐに立てられます。電線に気を付けて行います。

 

 

神社へ到着。

ニノ鳥居の前で大御幣が立てられます。ここが大御幣行事の見どころです!

一人の剣先が大御幣によじ登り万歳三唱をするのですが、今回は行われませんでした。本来もっと大御幣を支える為に人手がいるそうです。

 

大御幣を立てるところ。

 

境内へ運びます。

大御幣を穴に立てます。こちらも見どころです。

大御幣を4本の縄で8度~9度回すのですが、こちらも人手不足の為行われませんでした。1本の縄に4人いるそう。

大御幣から剣先(扇)を引き抜き、誰にも奪われないように大鳳館へ急いで駆け戻ります。

大御幣も戻っていき御幣行事が終わります。

 

 

 

神楽殿(国登録有形文化財)

蕨岡延年」舞が奉納されます。同時に本殿で「還御祭」が行われます。

 

蕨岡延年の舞の演目

児舞(稚児舞)の3演目、「童哉礼(どうやり)」「童法(どうほう)」「壇内入(たないり)」

舞楽(大人の舞)の4演目、「振鉾(えんぶ)」「陵王(りょうおう)」「倶舎(ぐしゃ)」「太平楽(たいへいらく)」

以上、7つの演目が太鼓と唱え言に合わせて舞われます。※今回「壇内入」はありませんでした。その年の人数によって変わります。

 

蕨岡修験で芸能と修行は一体のもので、かつては宿坊の跡継ぎに限られ、年齢に応じた通過儀礼として舞を厳しく修業してきたとされます。

戦後は宿坊の長男に限らず舞うことができるようになりました。稚児舞は男子が舞っていましたが、現在は少子化で女子も舞うようになりました。

 

 

YouTube「遊佐町公式チャンネル」にてご覧いただけます。「壇内入」「陵王」「太平楽」

過去記事からどうぞ 遊佐町民俗芸能公演会 in YouTube ※蕨岡延年の箇所をご覧ください

振鉾」お祓いの舞ともいう。舞楽の振鉾を取り入れた舞。鉾で四方堅めをする。

 

 

 

童哉礼」、「童法」 足拍子を足拍子を踏み、舞楽の検印や合肘の型がある。

 

修験者の家に生まれた長男は15歳までに児舞を習い、年齢を経るごとに各種の舞を身につけたことから、舞は修験者となるための大切な修行だったことが伺えます。16歳になると初めて入峰修業を許されたといいます。

 

「童哉礼」

 

「童法」

 

 

倶舎」扇の舞ともいう。日の丸の扇を開き、腰につけるようにして舞う。

 

 

 

太平楽」刀の舞とも言われ、除魔招福の呪法的な舞。狩衣の肩袖をぬぎ、相対して舞います。

 

 

 

陵王」蕨岡延年の中心的な舞です。1人の舞手が、共に切り顎の付いた”陵王”と、”納蘇利(なそり)”の面を取り替えて舞う。面が鎌倉期の作とみられ、蕨岡延年の舞は中世の芸能であるといわれています。

よろめくような酔態を思わせる仕草がある。

 

 

蕨岡修験者が舞っていた演目の数々、奥深いものを感じます。こうして修行をされていたんですね。

舞はそれぞれに特徴が色濃くあって、かつての修行の通過儀礼とのことで、それぞれの段階でどの様な舞の意味があったのかなと思います。気になりますね~。

 

 

今回4年振りの開催とあって、祭での皆さんの沢山の笑顔が見れて良かったです!

蕨岡延年も神楽殿で見ることができて何よりでした!

 

機会がありましたら、ぜひ上寺祭りに一度お越し下さいね♪修験道好きの方におすすめですよ~!

 

準備や撮影でご協力頂いた皆さん、どうもありがとうございました!貴重な上寺祭り、今後も続いていってほしい祭です。

出典・参考図書

『蕨岡 魅どころ案内【蕨岡ガイド】』 蕨岡まちづくり協会 2018

『蕨岡延年』神田より子/編集 遊佐町教育委員会 1994

  • 住所
  • 山形県飽海郡遊佐町上蕨岡松ヶ岡51
  • 駐車場
  • ニノ鳥居周辺
  • アクセス
  • 遊佐駅から車で約9分