湧水ハンター 小砂川編
遊佐町を飛び出して秋田の小砂川へ湧水採水に行ってました。湧水ハンタートミーです。
🌾地域と移住者が一緒に歩くまち歩き
9月28日(日)、秋田県にかほ市で「ブラにかほ 湧水と夕陽の郷・小砂川編」が開催されました。
主催はにかほ市役所企画振興部・連携推進課。
案内役を務めたのは、移住リエゾンの小林裕高さん、宇都宮律子さん、鈴木憲人さんの3名です。
参加者は、秋田に移住してきた方や地域の皆さんなど12名。
小砂川のまちを歩きながら、暮らしの中に息づく湧水や、地域の人々の手で守られてきた風景を巡りました。

🎲まち歩きがもっと楽しく!「ブラビンゴ」でスタート
最後には、みんなで一緒に夕陽を見よう!――
そんなワクワクするゴールを目指して、まち歩きは午後4時にスタートしました。
今回のテーマ「ブラビンゴ」は、“ブラブラ歩きながらビンゴを完成させよう!”というユニークな仕掛け。
用意されたビンゴカードには、「湧水」「猫」「お地蔵さん」「青い屋根の家」など、小砂川のまちなみで見つけられそうな景色がずらり。
「見つけた!」「あっちにもあった!」と、あちこちから声が上がり、まち歩きはまるで宝探しのよう。
参加者同士でカードを見せ合いながら笑い合う姿に、はじめて会った人たちの距離がぐっと近づいていきました。
海と山、そして湧水をめぐる小砂川のまち歩きは、笑い声と発見にあふれる、にかほらしい“ブラさんぽ”の始まりです。

最初に向かったのは、集合場所の小砂川自治会館から急な階段を下った先に広がる海岸。
潮の香りがふわっと漂い、秋の装いの波が出迎えてくれました。
かつて海水浴場としてにぎわいを見せていたこの砂浜は、
川の流れを変えて砂を寄せたという歴史があるそうです。
地元の方が語る話に、みんな興味津々。
「去年はここで泳いでたんだって!」と驚きの声も上がりました。
今年から海水浴場としての利用は終了しましたが、浜の奥の岩場へ進むと、小さな泡が弾けるように湧水がこんこんと湧き出していました。
その湧水はまるで命を宿したように透き通り、海水と混ざり合いながらも、しっかりと淡水の姿を保っています。
海と湧水が共存する不思議な光景に、参加者からは「すごい!」「きれい!」と歓声があがり、思わずシャッターを切る人の姿も。
遊佐町にも「釜磯(かまいそ)」という、同じように海辺から清水が湧く名所があります。
波打ち際の岩の間から絶えず湧き出す水は、日本海の潮風に包まれながらも驚くほど澄んでいて、
まさに“海と山が出会う場所”。
今回訪れた小砂川の湧水も、まるで釜磯のように、山の恵みが海へとつながっていることを感じさせてくれました。
💧暮らしのそばにある湧水文化
海岸を後にして、次は住宅地の中へ。
小砂川はかつて宿場町として栄え、松尾芭蕉が『奥の細道』の旅で通った道としても知られています。
昔ながらの家並みが続く通りを歩いていると、どこか懐かしい時間の流れを感じます。
道沿いには、さらさらと心地よい音を立てながら用水路が流れていました。
水面までの段差が低く、手を伸ばせばすぐ湧水に触れられるようになっていて、
思わず「冷た〜い!」と声を上げる参加者も。
この水はなんと地元では「硬水」と言われていて、ミネラルを多く含んでいるのだそうです。
地元の方によると、昔は夏になるとこの用水でスイカや牡蠣を冷やしたりしていたのだとか。
「冷蔵庫いらずだね!」と笑い声があがります。
さらに近年では、イクラをかごに入れて鮭をふ化させる実験も行われており、
昨年度はなんと2匹の鮭が戻ってきたとのこと!
その話を聞いた瞬間、「えっ、帰ってきたの!?」と参加者からどよめきが広がりました。
🙏水とともにある信仰
歩みを進めると、木々の間からひんやりとした風が吹き抜けました。
その先に、大きな岩の下から勢いよく湧き出す清らかな水が!
「うわぁ、すごい!」と参加者から思わず歓声があがります。
近づいてみると、湧水のそばには小さな祠があり、不動様が静かに祀られていました。
お賽銭が傍においてあり、地元の方々が今もこの水を大切にしていることが伝わってきます。
岩肌を伝う水の音がまるで祈りのように響き、
湧水と信仰のつながりを感じる、心洗われるようなひとときでした。
実は、遊佐町にも同じように不動明王が祀られている湧水があります。
それが「タテヒダの水」。鳥海山の麓で、岩の割れ目から清らかな水がこんこんと湧き出す場所です。
こちらでも地元の方が不動明王像を守り続けており、
「水を大切にする気持ちは、どの地域でも同じなんだね」と話す声も聞かれました。
小砂川の湧水とタテヒダの水——
場所は違っても、どちらも“水を敬い、守り、受け継ぐ心”が息づいている。
そんな共通点を感じながら、歩く足取りも少し軽やかになりました。
🪣暮らしを支えた「洗い場の記憶」
坂道を登っていくと、ふいに視界がひらけ、山を手前に屋根のある水場が見えました。
その水場から、ぽこぽこと小さな泡を立てながら湧水が顔をのぞかせています。
太陽の光を受けてキラキラ輝く水面に、思わず「きれい〜!」と声が上がりました。
屋根のある水場には、昔ここで洗い物や洗濯をしていた人の気配が残っています。
石で囲まれた水場の縁や、使い込まれた水道の跡を見つけると、
まるで昔の暮らしの音が聞こえてくるよう。
「ここで井戸端会議してたのかな」「この水でお米をといだのかな」——
そんな想像がふくらみ、参加者の間にも自然と笑顔が広がりました。

🏡歴史をつなぐ人の想い
帰り道の途中、江戸時代の紀行家・菅江真澄が宿泊したという「磯家(いそや)」跡に立ち寄りました。
静かな集落の一角に佇むその場所は、どこか時の流れがゆるやかで、まるで昔にタイムスリップしたよう。
地区会長さんが案内してくださり、「ここはいずいれ宿泊施設にしようと思っていて、地域のみんなで少しずつ整備を進めているんですよ」と笑顔で教えてくれました。
長い歴史を誇る場所を、今も地元の人たちの手で守り伝えていることに、参加者の心もあたたかくなります。
そのすぐそばには、神社の参拝前に身を清めるための手水舎(てみずや)がありました。
屋根に守られた木枠の中で、こんこんと湧き出す清らかな水。
手を浸すとひんやりとして、どこかすっと背筋が伸びるような心地よさがあります。
🌇夕陽とともに暮らすまち
最後は、地区会長が整備した花や瓦チップの美しい遊歩道を抜け、藪の先にある絶景スポットへ。
並べられた三つの椅子からは日本海が広がり、晴れた日にはまるでハワイのような夕陽が見られるそうです。
「ここでビールを飲みながら夕陽を見るのが一番の楽しみ」と語る地区会長の笑顔に、地域への誇りと愛情がにじんでいました。
この日はあいにく夕陽は雲に隠れましたが、参加者全員で集合写真を撮って「ブラにかほ」は無事終了。
ビンゴの景品はコーヒーで、「ぜひ湧水を汲んで飲んでくださいね」と手渡され、心温まる締めくくりとなりました。
💬小砂川の湧水がつなぐ、人と人
私自身も3か所の湧水を汲み、改めて小砂川の自然の豊かさと人の温かさを感じました。
地域の人と移住者が共に歩き、湧水とともに暮らす風景を知るこのイベントは、“にかほらしい暮らし”を体感できる素敵な時間でした。
✨次回の「ブラにかほ」も楽しみに!
自然・歴史・人の営みが交差する小砂川。
その一歩一歩に、湧水が流れるまちの物語が息づいています。
また、にかほ市に行って採水してきます。 by トミー