食卓にあかりを灯す、遊佐の味噌①

2026-03-10

/ by shumpei

こんにちは、ぺいたんです!
 
冬の寒さが少しずつ和らいできて、春の訪れを今か今かと待ちわびる3月。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
 

2月はじめ、厳しい寒さが町を覆い、たくさんの雪が降っていた頃。


 
寒さを吹き飛ばすような、熱気あふれる現場にお邪魔してきました!
 
それがこちら、「あかり味噌」の仕込み現場です✨


 

遊佐の家庭で長く親しまれてきた、地元の食材を使った手作り味噌の文化を絶やさないようにと、25年ほど前に生まれたというこの活動。
 
「あかり味噌」の名前には、「食卓に明かりを灯したい」という願いが込められているんだとか。
素敵ですよね😌
 

今回は、そんなあかり味噌づくりの3日間にわたる仕込み現場に密着。

僕もお手伝いをしながら体験したあかり味噌づくりの裏側を、3回の記事に分けてお届けします。
 

そこには、普段私たちが何気なく食べているお味噌のちょっと不思議で、とても温かい物語がありました。


 
それでは、いざ潜入開始!
 
┃お米が麹に変わる魔法
 
2月4日の朝、作業場に着くとすでに準備が始まっていました。
 
中心となって味噌づくりを進めているのは、普段はご家族で農家をされている伊藤仁美さん。5年前に活動の中心を引き継いだそうです。

実は仁美さん、僕と同じ東京の町田からの移住者なんです!

あかり味噌づくりを継承する伊藤仁美さん

 

この日お手伝いに入っていた猪飼さんも神奈川県出身で、12年前に鶴岡に移住されたとのこと。
 

聞くと、あかり味噌づくりに関わる人の多くが関東圏からの移住者なんだとか。
遊佐町の食文化を移住してきた人たちが継承しているって、なんだか素敵です。

この日お手伝いに入っていた猪飼さん

 
自己紹介もそこそこに、早速あかり味噌づくりスタート。
 
まずは、蒸したお米に麹菌をふりかけて米麹を作ります。
使うお米は仁美さんの旦那さんが育てたお米。
前日の夕方から水に浸けて準備しておいたとのことです。
 

今回使用した量は、浸水前の状態で72kg。
これを12kgずつ、6回に分けて蒸していきます。
 

蒸し時間は27分。
しゃもじを入れて蒸し具合を確認したら、台の上にザーッとあけて広げます。


 

これを手作業で丁寧に台上いっぱいに広げて冷ましていくのですが、やはり蒸したてのお米。最初はとても熱いです…


 

目指す温度は40度。
 

なんでも、50度以上では麹菌が生きられず、麹菌が活発にはたらくのに適した温度が30〜40度くらいなんだとか。
お米を冷ますのにはちゃんと理由があるんですね。


 
┃見えない菌との会話
 

40度まで下がったら、いよいよ麹菌の登場。
粉末状の麹菌を何回かに分けてお米の上にパラパラとふりかけ、麹菌が全体に均等に行き渡るようにお米をよく混ぜていきます。

麹菌が活発にはたらけるよう、32度くらいを目安に温度が下がりすぎないうちに混ぜ合わせる

 
混ぜながら、仁美さんがポツリ。
 
「見えない菌と会話してます」
 
…見えない菌との、会話?
 
麹菌に満遍なく”エサ”を与えるつもりで、丁寧に。
麹菌が元気になるように混ぜていくんだと教えてくれました。


 
その言葉を聞いた瞬間、ハッと思ったことが。
 
─── 食べものを作るって、こういうことなんだ。
 
自然の生き物の活動が、食べ物になる。
普段何気なく食べている味噌が、こんな風に誰かの手で、見えない菌と対話しながら作られているなんて。
 

当たり前のように思っていた「食べ物」が、急に特別なものに感じられました。
 
┃麹菌の不思議な力
 
麹菌とよく混ぜたお米は、「麹室(こうじむろ)」という温度管理された部屋で毛布にくるんで寝かせます。


 
35度程度を保ちたいところですが、麹菌が元気になってくると45度とか、ひどいと50度とかになることもあるんだとか。
 
・・・え、30度くらいから、50度に上がる…?
 
不思議に思って後で調べてみたら、麹菌が繁殖するときに「発酵熱」という熱を発生させるそうです。
しかし、なぜ熱が出るのか、そのメカニズムは実は不明らしい。
 

へ〜!自然の営みって、身近でもまだまだ分からないことがあるんだな。

 

だからこそ、温度を実際に計測して管理することが大切。

仁美さんは夜にも温度を確認しに来るということで、丁寧に、丁寧に、手をかけて米麹を作っていきます。


 
機械に丸投げするのではなく、その時々の状態に合わせて対応する。
その日の気温によっても冷め方が違うし、台が温まってくると台上でお米を冷ます工程に時間がかかるようになる。
 
手間ではあるけれど、これが工業化されていない頃の、本来の食のあり方なのかもしれません。
 
┃大豆を洗う
 
麹菌を混ぜたお米を全て麹室に寝かせたら、次は大豆を準備します。


 
大豆もやはり遊佐町産のもので、「地元の食材を使った味噌を食べたい」との思いから始まったあかり味噌の精神を体現しています。
 
使う量は60kg。
これを大体6kgずつに分けて、それぞれ4回丁寧に洗っていきます。


 
1回目の洗いで、なにやら泡が立ちました。


 
これは大豆の成分、「サポニン」が出てきているんだとか。
水に溶け出したサポニンが空気と触れると石鹸みたいに泡立つそうで、いわゆるアクなんですって。
 
へえ〜!大豆を洗うだけで、こんな発見が。

4回の洗いを終えるとこの通り泡立ちが目立たなくなります

 

洗い終わった大豆はたっぷりの水に浸けて保管しておきます。


 
ここでちょっとした注意点を教えてもらいました。
 
麹と大豆は、同時に扱わないんだそう。
なんでも、大豆に納豆菌がついてるかもしれなく、もし納豆菌がお米につくと麹菌より先に繁殖してしまうからということ。
 
なるほど、菌同士にも相性があるんですね。
見えない世界で繰り広げられる菌たちの営み。本当に、生き物と対話しながら食べ物を作っているんだなあと感じました。

 


┃明日は…
 

1日目を終えて、明日の予定を聞いてみました。
 
麹については広げて冷ます工程を3回行うそう。
1日で3回も?と思いましたが、そうしないと温度が上がりすぎてしまうんだとか。
 
大豆は浸水する水を換えるけれど、まだ火にかけないそうです。
 
明日も麹と大豆、それぞれのペースでゆっくり準備が進んでいくんですね。

 

普段何気なく食べている味噌。

でもその裏には、見えない菌との対話や丁寧な温度管理があって、夜にも確認に来るような手間ひまがある。

そして何より、それを手作りで続けている人たちがいる。
 
1日目を終えて、食べ物が「命」なんだということを、少しだけ実感できた気がします。
 
次回は2日目、麹の温度管理の様子をお届けします!

麹室で一晩寝かせた麹たちは、いったいどんな状態になっているんでしょうか…?
 
お楽しみに🙌

 

▼この後の仕込みの様子はこちらから

2日目:麹の温度管理、大豆の水換え

3日目:出麹、大豆の煮込み、材料の混ぜ合わせ、樽詰め

 

(文・写真:白井駿平)