協力隊がつなぐ町の縁、見えた誇り
こんにちは、ぺいたんです!
10月19日、遊佐町と朝日町の地域おこし協力隊が連携して、朝日町にて「遊佐高校生 朝日町農業体験ツアー」が実施されました。

今回は、先日公開した水谷隊員の記事と視点を変えて、取材者として同行した僕の視点から、協力隊のつながりから生まれた「町を越える関係性」に焦点を当ててお伝えしたいと思います。
┃企画を生んだ偶然の出会い
今回の企画は、山形県が実施する地域おこし協力隊の初任者研修で、水谷隊員と朝日町の大久保隊員(担当業務:りんごの郷の担い手)が偶然出会ったことから生まれたもの。

今回企画の中心で動いていただいた朝日町地域おこし協力隊の大久保隊員(左)と長沼隊員(中央)
「遊佐高校の生徒に他の地域の暮らしも体験してほしい」
「朝日町のりんごを町外の人にも知ってもらいたい」
そんな思いが重なり、町と町を越えた協働の体験ツアーが実現しました。
┃“りんごの町”の誇り
朝日町は、県内でも有数のりんごの産地。
ツアーでは、りんごの収穫体験や「ぱれっと企業組合」のジュース加工場の見学を通して、りんごに込められた人々の情熱を肌で感じることができました。
「農協から独立して10年。肉体労働で大変だけど、“りんごの町”という誇りがあるから続けられている。」
と語るのは、ぱれっと企業組合の代表理事、岡崎さん。

加工場で絞ったばかりのりんごジュースを飲んだ高校生たちは「甘い!」「もっと飲みたい!」と目を輝かせていて、地域の“誇り”が味として心に届いたようでした。
鮮やかな赤色のりんごジュースを振る舞いながら、「皮の赤色の色素が強いから、黄色ではなく赤い色味になる」と教えてくださった岡崎さん。
町の象徴であるりんごを人々へ届けることの喜びと誇りに満ちた表情が印象的でした。

りんごジュースのおいしさに驚きを隠せない高校生たち
りんご収穫体験をさせていただく農園では、その道50年という農家の清野さんから、朝日町のりんご栽培の歴史や品種ごとの栽培方法の違いについてお話を聞きました。

写真の左右に写るりんごの木はどちらも樹齢3年の幼木。
同じ樹齢3年でも、実のつき方がそれぞれ異なっています。
「木も人間も同じ。それぞれのペースがある。高校生のみなさんも、焦らなくていいんです。」
高校生に優しく語りかける温かい言葉と、人と同じように木に接して大切に育てていらっしゃる姿勢に、りんご栽培にかける思いの深さを感じました。
┃りんごの木を一本まるごと収穫
収穫体験では、一本の木に実ったりんごをまるごと全部収穫しました。
朝日町の大久保隊員によると、普段は実の生育状況に応じて収穫を進めるため、一本の木のりんごをまるごと収穫することはないのだそう。
今回の企画のために大久保隊員が交渉し、本来なら収穫できるものも農家の方が残してくださっていたのだと教えてくれました。
朝日町の農業振興課の後押しもあったとのことで、行政と協力隊と生産者が一丸となって今回の企画を充実させていただいたことを思うと、本当にありがたい気持ちになります。

りんごを収穫させていただいた木。周辺の木よりも多くの実がなっています。

水谷隊員も高校生と一緒にりんごを収穫
┃企画を支えた、協力隊どうしのつながり
今回のツアーは、水谷隊員と大久保隊員を中心に関係者の皆さんとの日程調整、情報発信の計画など打ち合わせを重ね、両町で9人の協力隊が関わって実施されました。
水谷隊員はこう振り返ります。
「遊佐は他の地域とつながることができる町。高校生に『山形の中にこんな暮らしがあるんだ』と感じてほしく、それが達成できてよかった。色々な業務に関わる協力隊が朝日町にいたことで、出会う人やコンテンツが充実したと感じる。大久保さんをはじめとする朝日町のみなさんの熱意があって実現できた企画でした。」

(写真提供:朝日町地域おこし協力隊工藤隊員)
大久保隊員も、
「最初はゆるいつながりから始まったが、企画しながら、『観光よりも深く朝日町を知ってほしいし、知ることで長く山形に住んでほしい』という気持ちが湧いた。当初の想定以上に豪華な企画になり、自分自身も改めて町のことを学べた。これを機に遊佐町と仲良くできたら嬉しいし、りんごの行商に行きたいです。」
と思いを話してくれました。

(写真提供:朝日町地域おこし協力隊工藤隊員)
朝日町役場の協力隊担当の方からも「協力隊どうしの連携が形になったこと自体が大きな一歩。これからも町を越えた交流を続けてほしい」とお話があり、今回のツアーは、協力隊をきっかけとした町どうしの交流発展に期待が膨らむ機会となりました。
┃関わりから際立つ誇り
単なる体験学習ではなく、“町と町の関係づくり”の機会となった今回のツアー。
朝日町のりんご農家の方々の誇り、協力隊どうしの信頼、そして参加した高校生たちの好奇心が交わり、地域を超えた新しい関わりが生まれました。
「今度は朝日町のみなさんを遊佐に招いて、おもてなしをしたい」
と水谷隊員が語るように、協力隊のつながりから始まった一つの企画が、町を越えて人をつなぎ、互いの地域に活気をもたらすきっかけになっています。

朝日町非公式PRキャラクターの桃色ウサヒと交流する生徒
僕自身、今回のツアーに参加して、朝日町のみなさんのりんごに対する強い誇りに触れることができました。
そして、りんごへの思いを語るみなさんの姿、表情を見て感じたことは、遊佐町も、もっと町の誇りを町内で共有し、町外へ発信していくことができるはずということでした。
鳥海山の景色、お米や岩牡蠣や鮭、日本酒にウイスキー、そして、水。
遊佐町にも誇れるものがたくさんあります。
他の町を訪れることでより際立って感じられた遊佐町の誇り。
朝日町のように、まずは町内でその誇りを育てていけたらいいなと感じた一日でした。
(注釈のない写真・文:白井駿平)