最近、湧水調査をそっちのけで河川調査に飛び回ってるトミーです。
遊佐町での河川調査と先日の月光川水辺の生きもの観察会を記事にまとめてました。
小さな命が奏でる川の物語
2025-09-22
/ by toyomi
■川の声に耳をすませて

8月中旬。青空がすっきり広がった遊佐町の朝、私たちは滝渕川上流へ向かいました。
ここしばらく曇りや雨の日が続いていたので、久しぶりの太陽がうれしくてたまりません。
じりじり照りつける残暑の陽射しに、川面がキラキラとまぶしく光ります。
今回のメンバーは、水環境に詳しい今井さん、鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会の長船さん、そして永泉寺の住職・熊谷さん。
まず私は川幅調査。

川好きで知られる長船さんと熊谷さんは、到着するやいなや網を手に石をひっくり返し始めます。
水辺でしゃがみ込みながら「ここにいそう!」と目を輝かせる2人につられて、私もつい夢中に。

カワゲラ、ナガレトビゲラ、ヨコエビ、ユスリカ、ナシウズムシ、イバラトミヨ、ハナカジカ、カンキョウカジカ…。小さな命が次々と現れ、思わず歓声が上がります。

「この虫はきれいな流れがないと生きられないんですよ」
「この魚がいるなら水温はけっこう低い証拠ですね」
専門家の解説を聞きながら、川そのものが私たちに話しかけてくるような感覚に包まれました。
■滝渕川と洗沢川をハシゴ調査

晴れ間を逃すのはもったいない! ということで、9月初旬のこの日は滝渕川に加えて洗沢川中流も調査することに。汗ばむ陽気でも、川から吹く風はひんやり気持ちいい。電気伝導率、水温、pHなどを順に測っていきます。
水の透明度や流れの速さ、岸辺の植生まで、ひとつひとつが川の「健康診断」データ。

計測を終えるころには、心地よい疲労感とともに“やったぞ”という達成感がじわっと広がりました。
目には見えない水質の変化や季節ごとの違いは、そこに暮らす小さな命たちが一番よく知っている――「生き物から川を読み解く」という言葉が、実感として胸に響きます。
■月光川で“生きもの観察会”
数日後の9月13日。今度は「月光川水辺の生きもの観察会」に参加しました。
午前9時、おでこBASEに集まったのは、中高生や大学生、地域の大人たち合わせて約40人。
観察場所は月光川ハチの巣公園です。生憎の曇り空。雨が今にも振り出しそう…
講師には兵庫県立人と自然の博物館の三橋弘宗研究員、主催は一般社団法人「遊ばざるもの学ぶべからず」。
令和7年度環境省のモデル事業の一環で、月光川養漁協同組合の阿部理事もゲスト参加です。
まず三橋研究員から「水生昆虫は水質を示すバロメーター」というお話がありました。
敏感な生き物ほど、ほんのわずかな環境の変化に左右されるそうで、その多様さや数を見ることで川の健全さが分かるとのこと。参加者の表情が一気に真剣になります。
■川に入って宝探し
いよいよ実地調査。子どもも大人も網を手に川へ。石を動かしたり草むらを探ったり、まるで宝探しです。
水しぶきが太陽に反射してキラキラ光り、あちこちから笑い声が響きます。

サワガニ、ヘビトンボ、コオニヤンマ、ナガレトビゲラ、ヤマトビゲラ、ヒラタカゲロウ、コガタシマトビゲラ、ヤマトビケラ、ゲンゴロウ、アユ、カジカ、イバラトミヨ、カワニナ…。次々に現れる生き物たちに、子どもたちは
もちろん大人も大興奮。
「川ってこんなににぎやかだったんだ!」
「ただの水じゃない、命の世界なんだなあ」

そんな声が自然とこぼれます。みんなが夢中で網を動かすうちに、いつの間にか川との距離がぐっと近くなった気がしました。
■川を守るのは私たち
滝渕川、洗沢川、そして月光川。今回の調査と観察を通して分かったのは、川の健康は数値だけじゃ測れないということ。そこに暮らす小さな命たちが、何より雄弁に語ってくれるのです。
澄んだ流れを未来に残すには、人と自然がいっしょに生きる知恵と実践が欠かせません。川の声に耳を澄ませ、その豊かさを次の世代へつないでいく――。
この2日間の体験は、そんな当たり前だけど大切なことを、あらためて教えてくれました。 by トミー