トミーの親戚!?イバラトミヨ

2025-10-29

/ by toyomi

こんにちは。地域おこし協力隊2年目、最近は河川調査にも足を突っ込み始めたトミーです。

これまで町内50か所以上の湧水をめぐってきましたが、
今回の主役は「水そのもの」ではなく、その水に生きる小さな生きもの――イバラトミヨです。

実は私の名前、トヨミといいます。
そう、イバラトミヨとちょっと似てるんです。
初めて名前を聞いたときは、「イトコトミヨ?」なんて思わず笑ってしまいました。
そんなご縁(?)もあって、最近はすっかり“トミヨ推し”になっています。

 

❄️ 氷河期から生き延びた魚 ― イバラトミヨとは

鶴岡市役所HP 希祥淡水魚「イバラトミヨ」についてから 引用

イバラトミヨは、トゲウオ科トミヨ属の淡水魚で、体長はわずか5〜6センチほど。
背びれにトゲのような棘(とげ)を持つのが特徴で、その名の通り、どこか“ツン”とした姿が印象的です。

実はこの魚、氷河期の生き残り(遺存種)
冷たい湧水を好み、きれいで酸素の豊富な流れにしか生息できません。
そのため、環境の変化にはとても敏感で、少しでも水質が悪化すると姿を消してしまいます。

分類:トゲウオ科トミヨ属の淡水魚
体長:5~6cm
寿命:1年半から2年
特長:背中にのこぎり状のとげが8~9本、胸びれの下側にとげが一対、
尾びれの前に小さなとげが1本あります。

生態(上)メス、(下)オス

 主なエサはユスリカや小型の甲殻類。水温が12℃~19℃位で安定した水が綺麗な場所に生息します。
4月から6月下旬にかけて、オスの体は黒く変化し、水草の茎などに植物の繊維と粘液をからめたゴルフボールくらいの丸い巣を作ります。巣ができると、メスを誘うためのジグザグダンスと呼ばれる求愛ダンスを踊ります。メスが巣に産卵、オスが巣の中に入り受精し、卵がふ化するまでの7~10日間はオスが巣と卵を守ります。

山形県では「絶滅危惧ⅠB類」に指定されており、
今では限られた地域でしか見ることができない、とても貴重な魚です。

 

💧 イバラトミヨと湧水のまち・遊佐町

そんなイバラトミヨにとって理想的な環境が、実はここ遊佐町にあります。
鳥海山の雪解け水が地中を通って湧き出す“自噴井”が町のあちこちに点在し、
その清らかな水がやがて川となって町中を流れています。

町の中心部を流れる八ツ面川(やつめんがわ)もその一つ。
この川には周辺の湧水が流れ込み、夏でも水温が低く安定しているため、
イバラトミヨが安心して暮らせる環境が保たれています。

かつてこの川は、家庭からの排水などで汚れが進み、
イバラトミヨの姿も少なくなっていました。
しかし平成6年度から5年間にわたって行われた「水環境整備事業」により、
八ツ面川は大きく生まれ変わりました。

 

🌿 “人の手”が守る生態系 ― 八ツ面川朝日堰流域水路管理組合の活動

整備が終わったあとも、この美しい環境を保つために立ち上がったのが、
地域住民による「八ツ面川朝日堰流域水路管理組合」です。

この組合は、単に水路をきれいにするだけではなく、
「川と人と生きものが共に暮らす地域」を目指し、
日々の維持管理や清掃、そして生態系の観察を続けています。

地域の子どもたちと一緒に生きもの調査を行ったり、
夏にはスイカや野菜を冷やしながら水辺を楽しむ姿も。
そんな“暮らしの中の自然”が、今もこの川に息づいているのです。

組合の皆さんは口をそろえて言います。

「この川は地域の財産だ。みんなで守っていかないと。」

その言葉どおり、日々の小さな手入れが、
イバラトミヨをはじめとした多くの生きものたちの命を支えています。

 

🌱八ツ面川に息づく小さな命たちと、子どもたちの笑顔

八ツ面川では、イバラトミヨのほかにもメダカやホトケドジョウ、スナヤツメ、アブラハヤ、ゴリ、シマドジョウ、カワニナ、コツブムシ、ヨコエビ、コシボソヤンマ、ツチガエルなど、
たくさんの水辺の生きものたちが共に暮らしています。
それは、人と自然がほどよい距離感で寄り添い、調和してきた証です。

私自身も川に足を入れて調査をしていると、水の冷たさ、底を滑る石の感触、
そしてそこをすばやく泳ぐ小さな魚たちに、「この町の湧水が生きている」と実感します。

そんな八ツ面川で、7月に雨で延期となっていた遊佐小学校2年生の「八ツ面川学習」がようやく開催されました。
朝は今にも雨が降り出しそうな空模様でしたが、途中の小雨を乗り越え、後半には青空が広がりました。
子どもたちは裸足で川に入り、夢中になって網を動かします。

「見て見て!魚がとれた!」「これ、ヤゴかな?」「こっちにもカニいたよ!」
そんな声があちこちから聞こえ、川の中は笑い声でいっぱい。
私も一緒に網を片手に、生きものを追いかけながら、子どもたちのキラキラした目に心を打たれました。

活動の最後には、「またやりたい!」と笑顔で手を振る子どもたちの姿。
その一言が、何よりもうれしいご褒美でした。

 

🌱 ふるさとを映す川

八ツ面川は、農業用水や生活用水として古くから地域の暮らしを支えてきました。
今も水田を潤し、子どもたちの遊び場となり、
そして町の真ん中で静かに流れ続けています。

この場所は「ふるさといきものの里100選」にも選ばれています。
それは単に自然が豊かだからではなく、
“人が手をかけ、守りながら共に生きる”という姿勢そのものが評価されたから。

川を見つめると、透明な水の向こうに、
そこに関わる人たちの思いと努力が見えてきます。

 

✨ これからも ― 湧水とともに

湧水があるから、イバラトミヨがいる。
イバラトミヨがいるから、水の豊かさを実感できる。
そして、その水を守る人がいるから、
この町の自然は今も息づいています。

これからも私は、湧水と川、そしてそこに生きる小さな命を通して、
“湧水のまち・遊佐”の魅力を伝えていきたいと思います。

 

🐟 イバラトミヨを見つけたら…

もし八ツ面川を歩くことがあれば、川辺をそっとのぞいてみてください。
透明な水の中を、すばやく泳ぐ小さな魚の影――それがイバラトミヨかもしれません。
彼らが泳ぐ姿は、湧水とともに生きる遊佐の宝物です。                 by  トミー