ハカマを取った稲わらの大変身

2025-01-14

/ by toyomi

こんにちは!トミーこと、早坂豊美です。

今回紹介する「なでぼうき」作りは、令和6年11月13日(水)に稲川地区の伝統行事事業として行われました。この事業には、同期の地域おこし協力隊 白井駿平君とともに参加してきました。「なでぼうき」は、稲川地区で長年受け継がれてきた技術と知恵を体験できる貴重な行事であり、地域の伝統文化を次世代に伝える重要な役割を果たしています。

わら細工と言えば、昔、私の実家でも祖父が冬の間に藁草履を作っていて、足の指に藁を挟みながら器用に編む姿をよく見ていました。その懐かしい記憶が蘇り、心が温かくなる時間を過ごすことが出来ました。

この「わらすぐり」や「なでぼうき」については、先輩協力隊の半澤香織さんが詳しく紹介した記事がありますので、興味があればぜひご覧ください。

駿平君が持っているのが、稲わらです。これを鉄の櫛でとかすようにして、稲のハカマ取り(わらの根元についている皮をはぐ作業)をしました。ハカマ取りのあとは、少しずつわらを束ねていきます。それをもって室内へ移動しました。

室内に移動して、次はわらない(わらを綯う)をしました。ご指導頂いたのは、稲川寿クラブ会長の高橋和久さん。
左右の手に3本ずつわらを持ち、こうやって左右のわらを持ち替えんなぁぞと器用になわないを進め1本作り上げました。
やはり小さい時からやっているということもあり早いし綺麗です。

私も見よう見まねでわらを手に取り、左手の上で右手を滑らせながら、左右のわらを持ち替えてみました。「おっ、意外にできてる?」と思い、器用だった祖父の血が自分にも流れているのかもしれないと、少し嬉しくなりました。

縄の始まりと終わりは珠結びにしておきます。すると、たちまち1本の縄が完成しました。この縄は、後で大事な持ち手になるため、とても重要な1本です。

本来なら「わらすぐり」はここまでなのですが、今回は4日後に行うイベント、わら細工の「なでぼうき」づくりの試作をやってみようということになりました。

 

なでぼうき作りの工程は、次の通りです。
①わらすぐりで束ねたわらの結びをほどき、先程作った縄を束ねたわら中心部へ入れます。
②縄入り束ねたわらを、男結びで縛ります。(結びが緩まないように、木槌で結ぶ部分をたたいて柔らかくする)
③結んだ男結びを指で押さえながら、わらを2、3本ずつ真下に折っていきます。
④全て折り終わったら、上から10㎝の部分を木槌でたたます。柔らかくなったら男結びします。
⑤もう一つ作る為①~④を繰り返します。
⑥下の余分な部分をカットし、2つを合わせて男結びをします。
⑦豆がらとゆずり葉を飾ったら完成です。

この男結びも難しかったです。綺麗に紐の最後が上向きに立つようにしなといけないという事で、参加者皆さん苦労していました。

わら細工「なでぼうき」づくり本番は、令和6年11月17日(日)に、地域の方々以外も参加し、制作から、「なでぼうき」を使った伝統的な行事まで行われました。その様子です。

参加者全員でなでぼうきを作ったあとは、本番さながら、伝統行事を再現してもらいます。出来上がったなでぼうきは神前に飾っておきます。
稲川寿クラブ会長の高橋さんのお宅では今でも年末年始になでぼうきを使った伝統行事を行っているそうです。

本来は、12月31日に神前に酒、スルメをお供えし、一年の埃を「なでぼうき」で敷居の外に3回掃き出します。

そして、元旦には大みそかと逆に敷居の中に福を3回掃き入れます。

参加した稲川の方の蔵には、昔の「なでぼうき」が今も残されているそうで、伝統がしっかりと受け継がれていることが嬉しくなりました。また、世間でよく耳にする「すす払い」。年末の大掃除とともに厄払いの意味を込めた儀式ですが、遊佐バージョンが「なでぼうき」なのかもしれません。すすや埃と一緒に一年間の厄を払い清らかになった家で新年を迎えることは、昔も今も変わらない大切な習わしだと改めて実感しました。

昔は天日干しでお米を乾燥させて収穫していたため、稲わらは暮らしに深く根付いていました。納豆を包む材料、家畜の寝床やエサ、畑の敷きわらや土壌改良剤など、生活のあらゆる場面で活用されてきたのです。しかし、現在では稲刈りはコンバインで行われるため、稲わらは細かく刻まれて田んぼに落ちるだけになってしまいます。稲わらを残すには、コンバインの排出設定を変える必要があり、その後拾い集めて束ね、乾かすために立てておきます。1~2週間ほど乾かした後、自宅に持ち帰るという手間のかかる作業です。

こうした背景から、稲わらは日本の暮らしから少しずつ姿を消しているのだと改めて感じました。昔の人々は、手間を惜しまず身近なものを最大限活用していたように思います。限られた資源の中で、自然に行われていた徹底したリサイクルやリメイクの姿勢には、物を大切にする強い思いが込められていました。

一方で、現代は物があふれ、ネットで簡単に手に入れたものが翌日には届くという便利な時代です。しかし、昔の知恵や再利用の精神には、私たちが振り返り学び、取り入れるべきことがたくさんあると感じます。

遊佐での暮らしの中で、このような気づきを得る日々を送れることが、本当に幸せだと思っています。   トミー