ほっこり遊佐のアマハゲ
吹浦地区の3つの集落に伝わる小正月行事のアマハゲ。怠け心を戒め、厄災を払い無病息災をもたらす神様と言われています。(国指定重要無形民俗文化財、ユネスコ無形文化遺産)
1/1滝ノ浦、1/3女鹿、1/6鳥崎でそれぞれ行われます(元は旧暦の1/15に行われていました)。
今回、女鹿と鳥崎に行ってきました!前から気になっていたアマハゲさん、怖いイメージでしたが行ってみたらほっこりする行事でした。
過去記事はコチラからどうぞ
遊佐の一番北、秋田県境に近い浦通りと呼ばれる、日本海の沿岸部にあります。
え、こんな小さい集落で!?続けているのはスゴイ!!と、初めて通った時、驚いたのを覚えています。
海岸に波の花が少しありました。日本海の風の強さが物語っていますね。
1/3女鹿 3つの集落で一番北にあり、大きい集落です。
アマハゲは3つの集落でそれぞれ神事として伝承されてきました。集落ごとに少しづつ違いがあるそうです。
集落内にある「神泉の水」。鳥海山からの湧き水が人々の生活の場になっています。過去記事はコチラからどうぞ
鎮守の八幡神社へ階段を登っていきます。
振り返ると日本海が。
境内にはぐるりと雪囲い。
神社で面開きの神事が行われます。
ケンダンの着付けを見学させて頂きました。ケンダンは藁を編んだもので、しめ縄と同じ意味があり、とても神聖なものです。
女鹿には田んぼが無く、今年は遊佐小学校の5年生が授業で育てた稲わらを使っています。
何枚か重ねていきます。女鹿では、11月から作り始めるそうです。1枚作るのに約1時間かかるのだとか。
ご神前に面を飾り、神酒を供えます。5人のアマハゲたちが集まってきました。
拝礼し、神酒を頂き面を付けます。体を清め、人間から神様の使いとなります。
なんだか藁が集まって丸々とかわいいフォルム・・・
16時頃、神社を出発。
階段をそろりそろりと降りるアマハゲさんたち。
太鼓の音と共に集落の各家を回り、家の中を清めます。
お面は、集落に伝わる「女鹿日山」の番楽(山伏が伝えた神楽のこと)で使用されていた、赤鬼、青鬼、ジオウ(翁)、カンマグレ、ガンゴジの面を使用しています。
赤鬼が大将(リーダー)で、青鬼はその連れ合いとのこと。
コロナ禍ということもあって、今回の訪問数は少ないそうです。代わりに、家の前に出てアマハゲを待っている皆さんもいらっしゃいました。(女鹿ではコロナ禍の為、2021年中止。2022年周遊のみ行った。)
行く先々でスマホ等で撮影されるアマハゲさん。人気者ですね!
子どもを発見するやいなや奇声を発し、すかさず捕まえ抱き上げてゆすったりして戒めます。
「いい子にします!、いい子にします!」と必死に泣き叫ぶ子。
その後はなんと、優しく接していたアマハゲさんなのでありました。泣き終えた子も、バイバイ!と手を振っていました。イメージと違って微笑ましく、なんだかほっこり。
5人そろうと迫力があり、かっこいいアマハゲさん。
海沿いの集落へ向かいます。
女鹿漁港 岩ガキやアワビ、岩ノリなどの海産物が獲れます。
冬の日本海らしく、波がすごかったです!
女鹿のアマハゲさん、ありがとうございました!
アマハゲが集落を回っている所。子どもからご祝儀をもらいお礼を言っています。
1/6鳥崎 3つの集落で一番南にあり、小さい集落です。
鳥崎にも湧き水が引かれてます。
19時頃、三上神社を出発。今年は平日で、仕事終わりの方もいるため少し遅い時間とのこと。
鳥崎の海岸ではアオサ等が採れます。なんでも、鳥海山からの湧き水がいいそうです。
ケンダンを下から巻き付けるようにして着せていきます。
鳥崎では、1/3に集まって作ります。昔は当日の朝から作っていました。
今回、アマハゲデビューをする高校生がいらっしゃいました。鳥崎が好きで続けていきたいそう。親子代々でアマハゲ・・・うぅ、頼もしいです!
撮影しに来ていたテレビユー山形さん(TUY)が、6年前に取材した子だよね!?と覚えていました。スゴイ!
お面はアマハゲ専用の面で、3つです。岩倉、笠森、水壺という近くの山の名前がついています。
女鹿と比べると、首周りは太く編んであり、稲の長さは短く、肩部分が横に張り出しているのが特徴です。
太鼓と鈴の音と共に、集落の各家を回ります。
今回特別に、アマハゲ保存会の皆さんのご厚意で、家の中で一緒にアマハゲを迎えさせていただきました!
見に来ていた渡辺隊員と筑波大学のロシア人の留学生(来訪神を論文にするとのこと)と一緒にいざ体験です。
部屋に入る前に一礼をする、礼儀正しいアマハゲさん。家人と新年の祝いを交わします。
奇声を発しながら引っ張って、玄関の方に連れ出そうとするアマハゲがいたかと思うと
日本酒やおつまみのもてなしを受け、一緒に飲んだりする一面もありました。
新年に家々に幸せをもたらす歳神様とあって、各家では丁重にもてなされます。
鳥崎では小さい集落ながらの、お年寄りの肩をもんだりといった住民との交流がありました。朝から楽しみにして用意していたという方も。ほっこりしますねぇ。
訪問が終わると、「鳥追い」の歌を歌いながら、隣の湯の田集落まで向かいます。以前は子ども達と一緒にしていたそうです。
「鳥追い」は、田畑を荒らす害鳥を追い払い豊作を祈る行事で、子ども達が鳥追いの歌を歌いながら、集落を一巡します。
他の集落でも行っていましたが、今は少子化のため行っていないのだそう。
昔はその後、子どもが公民館に泊まって12時、3時、6時と行っていました(太鼓持ちの役は人気だった)。
「鳥追い」の歌
宵鳥(よんどり)ホイ、ホイ いなかの鳥とたなかの鳥の渡らん先にゃ ホーンヤ、ホンヤ
(※宵鳥の所を、12時→夜中鳥、3時→夜明け鳥、6時→朝鳥と変えて歌う)
湯の田集落を回った後、「ホンデ焼き」をします。神社近くの山で、ケンダンと門松やしめ縄を一緒に燃やします。
各家々から集めてきた災いをケンダンごと焼き払います。神の使いであるアマハゲを天に返すという意味があります。
滝ノ浦はケンダンを海岸で燃やし、女鹿は状態のいいものは残して翌日に燃やします。
鳥崎ではアマハゲの行事を、休むことなく続けてきたとのことでした。(2021年コロナ禍の為、滝ノ浦と女鹿は中止だったが、鳥崎は周遊のみ行った。)
鳥崎の皆さん、ありがとうございました!新年の新しいスタートを元気に切れそうです。
1/1滝ノ浦のアマハゲを少し紹介します。滝ノ浦も気になります~。
大鳥神社 鳥居の横から湧き水が豊富に流れています。
お面はアマハゲ専用の面で、2つです。馬の毛が付いたシャグマを付けます。
3つの集落の中で一番ケンダンが多く、10枚以上身につけます。
稲わらは遊佐地区の農家さんから提供いただいているとのこと。
手が全く見えないのが特徴で、声を発しません。反閇(へんばい)という足で大地を踏む動作をします(場を清め、魔を祓う呪術的なもので山伏たちが伝えたものともいわれる)。
遊佐のアマハゲはほっこりする、とてもいい行事でした!皆さんの続けていきたいという想いが伝わってきました。これからも若い人へ伝えていってほしい大切な行事です。
少子高齢化や、若者の流出が小さい集落には大きな影響となっていて、行事の担い手不足・高齢化に直結していました。既に鳥追いは元の形ではできなくなっているなど、一つ一つ無くなっていく行事もあること。遊佐の他の地区の行事でも同じように課題となっています。時代の流れで変わってきている現状を感じました。
出典・参考図書
『無形民俗文化財・遊佐のアマハゲ』編集・出版 / 遊佐町教育委員会 1984
『遊佐町のアマハゲ』著者 / ゆうとぴい・みわの会、出版 /多機能型通所施設ゆうとぴい 2020
参考Web
ふるさと塾アーカイブス – ふるさと山形 地域文化 伝承・体験サイト
動画「紙芝居 遊佐町のアマハゲ」著者 / みわの会、多機能型通所施設ゆうとぴい 2020
画家の原田泰治さんが、鳥崎のアマハゲを作品にされていました。感激です~!!
原田泰治オフィシャルブログで、アマハゲの作品が紹介されています!
2022年12/13「原田泰治美術館にキルトの季節がやって来ました」-原田泰治オフィシャルブログ
原田さんの作品が素晴らしいのはもちろん、原田さんの作品を元に作られたキルトの作品(上記ブログからご覧いただけます)も見事です!
原田さんのアマハゲは、藁が畳に落ちている所など、細部にわたり緻密な描写で描かれています。
アマハゲの作品(1984年)は、朝日新聞の日曜版に連載されていた「原田泰治の世界」(1982年4月~1984年9月)の取材をする中で描かれたとのこと。
原田さんが日本各地を取材し、日本の原風景を描いた絵と文章が掲載されました。
(リンク、作品の画像と文章の掲載の許可を頂きました。どうもありがとうございます。)
アマハゲのキルトの作品が今、開催中の展覧会でご覧いただけます。
諏訪市 原田泰治美術館(長野県)
「絵画キルト新作展―原田泰治の世界―」2022年12月14日(水)~ 2023年4月18日(火 )
前期:2022年12月14日(水)~2023年2月12日(日) ←アマハゲのキルトの作品は前期です。
後期:2023年2月14日(火)~2023年4月18日(火)
こちらの展覧会も開催中です。
「原田泰治の世界をキルトで遊ぶ 絵画キルト作品展 ―長野県受賞作品―」2022年12月7日(水)~2023年4月18日(火)
「原田泰治が描く ふるさと信州の四季」2022年3月2日(水)~2023年4月18日(火)
お近くにお立ち寄りの際は是非ご覧ください。
◇諏訪市 原田泰治美術館(長野県)◇
開館時間 午前9時~午後5時(入館閉館30分前まで)
休館日 月曜日(祝日開館)、年末年始、展示替え日
観覧料 大人840円、中・高校生、障がい者(大人)410円、小学生200円