食卓にあかりを灯す、遊佐の味噌③
こんにちは、ぺいたんです!
3回にわたってお届けしているあかり味噌づくり、いよいよ最終日です。
3日間の仕込みの集大成。
昨日の時点でまだ別々に保管されていた大豆と麹。
ここからどのように味噌ができあがっていくのでしょうか。
┃香り立つ、大豆と麹
2月6日の朝、9時過ぎに工場に向かうと、すでに仁美さんが大豆の鍋の火加減を見守っていました。

工場に入った瞬間、苦味と甘さが混ざったような独特な香りが鼻をくすぐります。
この香り、どこかで嗅いだことがある…
そうだ、子どもの頃、実家の隣にあった豆腐屋さんの香りとそっくりです。
あの香りは、大豆の香りだったのか!
8時くらいから火を入れていたとのことで、煮込み時間はすでに1時間ほど経過。
大豆の香りで満たされた工房は、個人的に懐かしさを感じる空間になっていました。

少しずらした蓋の隙間から大豆の香りが立ちこめます

蓋の乗せ方を変えたりしながら細かく煮込み具合を調整。
鍋の場所によって火の当たり方に違いがあるそう。
アク取りなどをして大豆の鍋が吹きこぼれないように見守りながら・・・


メレンゲのようにふわふわのアク
並行して、麹を冷ます工程を開始。
「出麹(でこうじ)」と呼ばれる工程だそうで、今日はできる限り麹を冷まします。
温度が高いままだと、この後塩と混ぜた時に水分が出過ぎてべちゃべちゃになり、機械に入れた時に詰まりやすくなるんだとか。

これまでは1袋ずつ冷ましていた麹を、今日は全て一気に冷まします
麹を広げてみると、2日目よりもさらに状態が変化していました。

菌がより広範囲に根を張っている

塊がより大きく固くなっていて、立てても形を保つほど

”幸せの香り”も、昨日より強く、深くなっている気がしました
2日間かけてお米がこんなに変わるなんて。
麹菌の力って、すごいですね。
ちなみに、元々72kgだったお米は、米麹になる過程を経て1.3倍ほどの重さ(90kgくらい)になるそうです。
大豆はトータル2時間半ほど煮たら火を止めて、20分そのまま蒸らします。

試しに食べてみると、煮る前にあった苦味や青っぽい味がすっかりなくなって、甘さが出てきていました。食感も柔らかくなっています。
煮上がった大豆を冷ますためにざるにあげたら、午前中の工程は完了!
午後に備えて休憩です。

┃ついに大詰め。ダイナミックな味噌づくり
午後から、遊佐さんと真嶋さん、猪飼さんがお手伝いに加わり、仁美さんと僕を合わせて5人で仕込みスタート。
まずは、大豆の上下をひっくり返してさらに冷ます工程を僕と真嶋さんが、大豆を煮た鍋を洗う工程を遊佐さんと猪飼さんが担当して進めます。

ひと段落したら、道具の片付けや準備をして、いよいよ味噌づくりが大詰めへと突入です!
■塩と麹と大豆
ついに、麹と大豆が出会う瞬間が訪れます!
まずは塩と麹を混ぜ混ぜ。

材料の混ざりを良くして味のムラができないように、塩の塊をつぶしながら混ぜていきます。
続いて、大豆を投入!味噌の元になる材料がようやく一つになりました。

ちなみに、大豆は次の工程の直前に混ぜ合わせるのがポイントなんだそう。
塩に触れる時間が長いと水分が出てきてべちゃべちゃしてしまうんだとか。
細かいところまで気を配っているんですね。
塩と麹と大豆を混ぜ合わせたら、味噌練り機に投入!
すると、ひき肉のようにミンチ状に練りつぶされた味噌のもとが出てきました。

■味噌玉づくり
出てきたミンチを丸くこねて、味噌玉を作っていきます。

しっかり体重をかけないとまとまらないし、ミンチはどんどん押し出されてくるからスピード感も必要。
ここの手際の良さが工程全体の進み具合を左右する、そんなポジションです。
僕も体験させてもらいましたが、一つの味噌玉の大きさや力のかけ方の加減をつかむのが大変でした。
基本的には仁美さんが味噌玉作りを担当し、テンポよく味噌玉を作ってくださいました。

■樽詰め
できた味噌玉を、大きな味噌樽に詰めていきます。

あかり味噌を作り始めた方々が家庭で使っていたものを持ち寄ったという木樽たち
家庭でこの量の味噌を仕込むなんて、想像もつかない…
どのように味噌を詰めていくかと言うと、



・・・投げ入れていきます。
決して乱暴に扱っているわけではなく、できるだけ空気が入り込まないように味噌を詰めていくための工夫なのです。
ちなみに、木樽で仕込むのは味噌にとっていいそうで、麹菌を仕入れている先の会社の方が「ぜひ続けてください!」と太鼓判を押してくれたんだとか。
麹菌を知り尽くす会社の方も勧める環境で作られる味噌。贅沢ですね~
この工程は主に真嶋さんが担当。
途中で僕もやらせてもらいましたが、味噌玉が一つ1kg近くあるので、投げつけるのも繰り返すと案外疲れます。
しかも投げつけた後に空気を抜くように押し付けていくのも手間がかかるし、体勢は樽内に身体を乗り入れる格好になるしで、かなりの重労働。

普段は農家をされている真嶋さん。
味噌の樽詰めを淡々とやり続ける体力、すごいです。
他の4人で、麹と塩と大豆の混ぜ合わせ、味噌玉づくり、洗い物などを交代しながら手分けして担当。
5人の連携がうまく噛み合い、予定よりもいいペースで仕込みが進んでいきました。
~ダイナミックさの裏側~
ここの工程のダイナミックさを見ていて感じたことがあります。
3日目の午後、人手をかけて多くの動きが連動する工程ですが、道具の準備をしてから材料を混ぜ合わせて樽に詰めるまで、時間にしてわずか1時間半ほど。
でもそこに至るまでの準備は、米麹を育てて、大豆を柔らかく煮て、3日間の時間がかかっている。
その準備をきちんとやっているからこそ、食材が分離せずにまとまってきれいな味噌玉ができて、どんどんと樽に詰めていけるんだと思います。
分かりやすい出来事の裏には、それを成立させるためのたくさんの準備がある。
そんなことを実感する機会にもなりました。
■表面を整える
さて、そんなことを考えているうちに、全ての味噌玉が詰め終わりました。
最後に表面をきれいにならします。

こんな状態から、

こんな状態に。
この工程、後で袋をかけて寝かせるときに、表面の空気を抜いてカビを防ぐためにとても重要なんだそう。
真嶋さんが仕上げた時点で十分きれいに見えましたが、仁美さんが一言。
「もっときれいにしたい」
そこで、ここまでパワフルに味噌を詰め続けてきた真嶋さんの後を受けて、僕が表面を整えさせていただくことに。
15分くらいかけて整えました!

どうでしょうか。仁美さんにチェックしてもらいます。
「…へりのところも、きれいにしたい」
・・・ですよね!実はちょっと気になっていました。ちょっとだけ。
ビニール袋に触れている端の部分を、ビニール袋の外側から内側へ押し込んでつぶしていきます。
10分ほどかけて丁寧に。
これでどうだ!

仁美さん「合格」
よかった〜!
へりに薄くへばりついた部分が残ると、その部分がカビやすくなるんだそうです。
終わりまで気を抜かず丁寧に。少しでもおいしい味噌を作るために余念がありません。
最後に、表面に塩を広げて、袋を被せて、石を乗せます。



味噌ができる限り空気に触れないように、徹底して対策を施すんですね。
┃2年後への期待
3日間の仕込みの後、この味噌は2年間熟成させて完成するそうです。
1年でも食べられないことはないけれど、熟成させることで塩味の角が丸くなり、まろやかな味わいになっていくんだとか。
2年後、この味噌がどんな味わいになっているのか。
今から楽しみです♪

工房で眠る、歴代の味噌たち
┃3日間の仕込みを終えて
今回の味噌づくりの密着を通して改めて感じたのは、食べ物が「誰かの手」によって作られているということ。
見えない菌と対話しながら、温度を測って、冷まして、混ぜて、詰めて。
丁寧に丁寧に、手をかけて。

しかもその中心にいるのが、関東圏から移住してきた人たち。
遊佐町の食文化を、移住者が手作りで守り続けている。
なんだか不思議だけれど、とても素敵なことだと思いませんか?

今回お会いした方は皆さん移住者でした
お邪魔させていただいた仕込みは、今シーズン5回行ううちの4回目。
1回の仕込みで使う米麹が90kgくらい、大豆が120kgくらいということで、味噌の総重量は200kg超え。
1シーズンで少なくとも1トンもの味噌を仕込むとは、大変なことですね。
先日最後の仕込みを行って今シーズンの仕込みはひと段落したそうで、みなさん大変お疲れ様でした。
そんな、移住者の方々を中心に守り継がれているあかり味噌は、道の駅ふらっとの産直コーナーをはじめ、ふるさと納税、そして最近新設したというオンラインショップでお求めいただけます。

写真提供:伊藤仁美さん
※写真は、味がよりまろやかだという米麹2割増しのもの。3月中限定の販売。
遊佐町で守り継がれる味噌。
見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。
その味噌の裏には、命を育む物語がありました。
(文・注釈のない写真:白井駿平)