今年も来訪、女鹿のアマハゲ

2026-01-16

/ by shumpei

あけましておめでとうございます!ぺいたんです。

みなさん、お正月はゆっくり過ごされましたでしょうか?

僕はここぞとばかりにたくさん食べて寝ての年末年始を過ごしました(笑)

 

そんな怠け心を戒めるべく、寝正月もそこそこに、1月3日に早速今年最初の取材に行ってきました!

場所は吹浦地区の女鹿(めが)集落。

 

そう、今回ご紹介するのは「アマハゲ」です!

 

¶アマハゲとは?

遊佐町の小正月行事:女鹿、滝ノ浦、鳥崎の3集落に伝わる、正月に行われる民俗行事です。
ユネスコ無形文化遺産:2018年に「来訪神:仮面・仮装の神々」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。国の重要無形民俗文化財でもあります。
どんな行事?:起源は諸説ありますが、神様が家々を回って子どもの怠け心を戒めたり、家族の健康や無病息災を願ったりする行事です。

(さらに詳しくは、町のホームページをご覧ください。)

 

 

◆アマハゲ、いざ出陣!◆

 

 準備と神事、隠された苦労 

 

アマハゲの出発点は、集落を見守る八幡神社。

ここで、担い手の方々が「ケンダン」を身にまとい、準備を整えます。

 

「ケンダン」とは、稲藁を編んで作った蓑(みの)のこと。

女鹿のアマハゲはこれを7枚重ねて身に着けます。

かつては集落で収穫した稲の藁を使っていましたが、今では町内から広く集めて確保しているそうです。

 

女鹿アマハゲ保存会会長の池田洋一(ひろかず)さんに伺ったところ、ケンダンは一つ編むのに約1時間かかるそう。

少なくともアマハゲ5体分、予備も含めて40枚は用意するとのことで、11月中旬頃から土日の時間を使い、時には池田さん一人の時もありながら準備を進めたそうです。

長期間に及ぶ丁寧な手仕事に頭が下がります…

アマハゲの担い手にケンダンを着せる池田さん(中央)

 

そして、今年のアマハゲにはもう一つのドラマが。

女鹿のアマハゲは基本5体で行動するのですが、今年は担い手を5人確保できたのがなんと当日の朝。

「身内に不幸があった年は担えない」というしきたりの影響などもあり、今年は特に人手不足が厳しかったそうです。

関東から帰省中の方も急遽参加するなどして、なんとか揃った5人の担い手

 

神社でお祈りをささげ、おちょこ1杯のお酒を飲み、お面をつけると、来訪神「アマハゲ」に変身完了です。

 

 

 石段を下り、集落へ降臨 

 

八幡神社があるのは山の中腹。

そこから続く長い石段を、アマハゲたちはゆっくり、ゆっくりと下りていきます。

 

その先で待っているのは、子どもを含めた20人ほどの集落の人たち。

 

アマハゲの姿が見え始めると、

「ギャァァァァーー!!!」

さっそく子どもたちの泣き声が響き渡ります。

 

アマハゲに抱きかかえられた子どもたちは、もう必死!

「お父さん、お母さん助けてー!」と思っているでしょうが、親御さんはニコニコ見守るだけ。

 

こうして子どもたちは、「親がいつでも頼れるわけではない」という世の厳しさを学ぶのですね・・・。

路上でひとしきり子どもたちを戒めたあとは、太鼓の音を先頭に、いよいよ集落への訪問が始まります。

◆神様が家へやってくる!◆

 

 まずは自治会館へ 

 

今年は最初に自治会館を訪問しました。

集まった子どもたちの半分くらいは、今日が「初アマハゲ」。

 

何が始まるのかとドキドキしながら待っていると、

アマハゲが勢いよく駆け込んできた!!

 

子どもたちはもみくちゃにされながら泣いたり、思わず笑ってしまったり。

 

「お母さんを困らせないようにお手伝いします!」

「勉強がんばります!」

などと大きな声でアマハゲと約束を交わしていました。

 

最後はしっかり新年の挨拶をして、お神酒やお餅をお供えしてお見送りです。

 

【ご家庭訪問その①:恐怖と成長】

今年は、集落に40軒あまりあるお宅のうち、20軒弱を回ります。

あるお宅では、親戚のお姉さんの膝の上で待機する小さい姉妹の姿がありました。

 

最初は、たくさんのカメラマンを前にポーズを決める余裕もありましたが、

 

ドン、ドン、ドンと太鼓の音が近づくにつれて緊張した面持ちになり、

 

「フウォー!!」という甲高い雄叫びとともにアマハゲが駆け込むと、一瞬で恐怖の表情に変貌!

 

お姉さんから引きはがされると、「助けて~!!」と声にならない叫びを全身で訴えていました。

 

去年アマハゲを経験したという男の子も、必死の表情で逃走を図ります。

 

そして大人も油断禁物。男の子のお母さんまでアマハゲの洗礼を浴びることに!

 

お供え物の時間もアマハゲは容赦しません。

 

今年小学校に入学するという男の子は、恐怖と戦いながら「勉強頑張る」と約束していました。

 

帰り際、さっきまで泣き叫んでいた女の子がアマハゲと手を合わせてお見送り。

 

悪い人たちではないようだと気づいたのかな?

その勇敢な姿に、僕まで嬉しくなってしまいました。

 

アマハゲが去ったあとに残る藁には、たくさん落ちるほど福が訪れるとのいわれが。

落ちた藁を集めて束にして神棚にお供えするまでが、アマハゲを迎えるご家庭の一連の所作です。

 

【ご家庭訪問その②:大人たちの交流】

アマハゲが回るのは、子どものいる家だけではありません。

大人だけの世帯にも来訪します。

各家庭の息災を確認する大切な機会でもあるんですね。

 

ここでは荒々しさは控えめに、大人同士の落ち着いた会話で交流を深めている様子。

集落の馴染みの人同士だからこその和やかな笑顔の雰囲気が、とても温かかったです。

 

【アマハゲの裏側】

アマハゲがお宅を訪問している間、玄関先にはお手伝いの子どもたちとアマハゲ保存会のみなさんが待機。

下駄を揃えたり、お供え物を預かったり、暗い夜道をライトで照らしたり。

神様が家の中で全力を出せるのは、こうした「隠れたサポーター」の存在がありました。

 

【ご家庭訪問その③:3世代の笑顔】

最後におじゃまさせていただいたお宅は、女鹿集落の区長さんのお宅。

区長さんのご家族とご親族、いろんな世代が揃ってアマハゲをお迎えします。

写真左端が女鹿集落の高橋区長

 

子どもは2人。

彼らがアマハゲに揉まれて成長する姿を大人たちがそれぞれの関係性から見守るその雰囲気は、とても微笑ましいものでした。

母娘と孫の3世代でアマハゲに揉まれる光景がとっても幸せそう

 

実はアマハゲ役のひとりが区長さんの息子さんだそうで、子どもたちのお母さんとは、いとこ同士とのこと。

神様としてお家を去った後、親戚写真をパシャリ。

 

こんなアットホームさも、地域行事ならではですね。

 

 

◆今年も良い年になりますように◆

 

最後のお宅の訪問を終え、一行は自治会館へ。

 

ケンダンを脱ぐと、さっきまでの荒々しさはどこへやら。

お互いの健闘を称え合いながらふーっと息をつき、とても和やかな空気が流れていました。

 

お兄さんの拓馬(たくま)さんと一緒に兄弟でアマハゲを担当した池田祥大(しょうた)さんは

「子どもを泣かせて戒めるという目的が果たせれば、形はどうあろうと継続していきたい」と話します。

普段はとても気さくなお人柄。お面をつけると自然とアマハゲになれるんだとか

 

夏に取材した杉沢比山もそうでしたが、集落外の出身の人にも担い手の門戸を広げることなどを考えながら、どうにか伝統を継承していきたいという思いに触れることができました。

 

ユネスコにも登録された、世界に誇る伝統行事。

担い手不足などの課題はありますが、子どもたちの元気な泣き声と、大人たちの朗らかな笑い声がこだまするこの温かい光景が、来年も再来年もずっと続いてほしいなぁと強く思ったお正月でした。

 

(文・写真:白井駿平)