大黒舞☆華麗なる復活
湧水ハンターも、この暑さには勝てません。そんな夏バテトミーです。
毎年7月16日は、遊佐四大祭の戴邦碑祭(たいほうひさい)。
三方領地替えを中止させた文隣和尚と義民の皆さんに
感謝の気持ちをささげる祭です。

♪神や仏のお力で ハァ公儀の評議も御沙汰止みて 本領安堵はめでたいとなぁ
ハァ めでたい めでたい めでたい♪
『おすわり大黒舞』の澄んだ声と太鼓の音が、玉龍寺に響きました。
それは6年ぶりのことでした。

『おすわり大黒舞』
かつて、戴邦碑祭には必ず登場し、披露されていた遊佐町の民俗芸能です。
しかしコロナ禍で途絶え、関係者の高齢化で再開の目処も立たないまま、
いつの間にか町から姿を消していました。
その灯を再びともしたのは、稲川地区の有志の方々。
今年の夏、復活に向けた動きが始まりました。

練習は、毎週水曜日の18時半、日曜日の18時から。
場所は稲川まちづくりセンター。
仕事や農作業を終え、汗をぬぐいながら集まった皆さんが、一列に並びます。
扇子の開き方、小槌の振り方、太鼓の叩き方。
一つひとつの所作には意味があり、ただ振るだけではなく節回しに合わせた“間”が大事。

一歩踏み出す足の運びすらも、ただ歩くのとは全く違い、
リズムを刻む太鼓の音に呼吸を合わせる必要があります。

「もっと扇子を高ぐあげで。」
「小槌は腰の高さで、まっすぐな。」
「ハァーめでたい、のタイミングは早ぐなんね。」
地域の先輩方の声が、熱気と一緒に響き渡ります。
稲川まちづくり協会の佐藤事務局長からは、
「早坂さんも、一緒に踊らねが?」
と声をかけていただきました。
だけど――
私、リズム感ゼロ。
音感もゼロ。
緊張すると手も足も一緒に出るタイプです。
「いや、私には務まりません…」
笑いながら、丁重にお断りしました。

その練習の音を聞きながら、夕暮れの風に吹かれると、何とも言えない誇らしさと懐かしさを感じます。
軽快に響く小槌の音と太鼓の音、力強くも優しい唄声。
外から聞いているだけでも、その空気はしっかりと胸に刻まれます。

杉沢民謡会会主 佐藤正一さん。
【6年ぶりに戻ってきた伝統の音】
それは、ただ芸能が戻ってきただけではありません。
「今のうちに覚えねば、伝える相手がいなくなる。」
「自分たちが元気なうちに、もう一度やらねば。」
そんな思いを胸に、地域の大人たちが再び集まり直した夏でもあります。
湧水のように清らかに、しかし絶えることなく流れ続けてきた地域の誇り。
「おすわり大黒舞」は、この夏、新たな一歩を踏み出しました。
そしてその音はきっと、未来へと繋がっていきます。
そんなことを、この夏、教えてもらいました。 by トミー