【遊佐の匠シリーズ】第二弾!!

2021-04-30

/ by shige

 

 

動植物と同じく無事越冬した協力隊のシゲタです。ルンルン気分で春風と共にノリに乗って外で撮影しておりましたら、こちらの記事アップが滞ってしまいました…ヒィィィ~!!

ご無沙汰となりますが【遊佐の匠シリーズ】第二弾………です!!!

 

 

シリーズ第二弾となる今回は、【LLP遊佐刺し子ギルド】代表・土門玲子さんへ取材させて頂きました!

※LLPとは、Limited Liability Partnership(有限責任事業組合)の略です。

刺し子の世界では、青森県南部の菱刺し、津軽のこぎん刺し、そして山形県庄内地域の庄内の刺し子が代表的な日本三大刺し子となっております。

そして、庄内の刺し子のルーツと考えられているのが我が町の遊佐刺し子です。

 

恥ずかしながらわたくし、遊佐町出身ですが遊佐刺し子をUターンするまで知りませんでした…遊佐刺し子との出会いは、Uターンしたての頃に本屋さんで見かけた遊佐刺し子の本でした。「遊佐刺し子?そういう遊佐独自の文化があったのか…」と興味がわきました。

ちなみに遊佐刺し子の本は今現在4冊発売されており、1冊は英訳されて海外でも販売されているそうです。

 

遊佐町地域おこし協力隊と肩書が入った名刺を渡す時、地元の伝統手工芸である遊佐刺し子の名刺入れからサッと名刺を出す私、ステキじゃない!と得意の妄想が膨らみまして…笑

唯一、LLP遊佐刺し子ギルドさんの商品取り扱いがある【鳥海温泉 遊楽里】さんへ行き、早速購入しました!気になる文様がいっぱいあって、どれにするかすごく迷いましたよぉぉぉ。

 

これは早速取材をせねば!と思い、今回の記事へと繋がりました。

時代と共に遊佐刺し子を知る人が少なくなった現在ですが、以前は遊佐の伝統文化を後世にも残そうと活動をされている地元の女性の方々や、保存会の方々がいらっしゃいました。その中で、日本だけでなく海外の方へ向けても広く遊佐刺し子の普及活動を行っている土門玲子さんを訪ねる事にしました。

玲子さんからお話しを伺うにつれ、遊佐刺し子の奥深さを知りました。私のような遊佐刺し子の知識がなくとも、まずは「遊佐刺し子」という地元の伝統文化に触れて知って欲しい!という想いでこの記事を書きました。

 

 

早速、玲子さんのご自宅へ伺ったところ、前回の取材(福増建具店さん)に続きまたまたネコちゃんがお出迎えしてくれました!

ちなみに私はネコ派です。笑

玄関でお出迎えしてくれたのはココちゃんでしたが(写真がなくてすいません…)、玲子さんを独占する私に嫉妬したかのように、お部屋へ侵入してきたのが写真のマユちゃんでした。「おめ、誰だ?!いづまでいんなや?!」と言わんばかりのこの表情がたまりませんねぇ!!

 

刺し子は衣類などの生地補強のために糸で生地を繕うというものですが、遊佐刺し子はそれだけでなく、遊佐の暮らしと密接に結びついていました。

現在のようにプロパンガスが普及する前は、沢山の薪が生活には必需品でした。その頃、遊佐町には「橇木山(ソリギヤマ)」という風習があったのです。

木々から葉が落ちる頃、鳥海山の3合目付近で間伐材として倒した木々を薪用の木材として積み上げておきました。雪が積もった頃、その大量の薪を橇(ソリ)に載せて運び下すというこの行為を「橇木山(ソリギヤマ)」と呼んだそうです。

 

恥ずかしい話、玲子さんのお話しを聞きながら橇木山(ソリギヤマ)とは山の名称と思っていました…まさか薪を運ぶ作業の事だったとは!!笑

そして、その橇木山(ソリギヤマ)の作業時に着用していたのが橇曳き法被(ソリヒキハッピ)でした。

↑↑↑偶然にも私と同時期に取材へ行かれていた山形新聞さんの記事から橇曳き法被(ソリヒキハッピ)の写真を拝借。発信、だいぶ先を越されました…反省。

 

 

橇曳き法被(ソリヒキハッピ)に刺し込まれていた刺し子の文様こそが遊佐刺し子だったのです。

古来より、神そのものと崇められていた鳥海山へ危険を伴う橇木山(ソリギヤマ)。遊佐刺し子は、生地を補強するだけでなく、無事に帰って来ますように…という家族の願いを込めて作られたものだそうです。

代々、橇曳き法被(ソリヒキハッピ)を受け継いでいくとともに、作り手もお姑さんからお嫁さん、お嫁さんからまたその新たなお嫁さんへとそれぞれが違う文様で、それぞれが祈りを込めて引き継いでいったそうです。

 

そういった遊佐町の生活文化が詰まった貴重なものをなくしてはいけない!と多くの方へ聞き込みをし、現存する橇曳き法被(ソリヒキハッピ)の製図をしたそうです。きっちりとファイリングされているその膨大な量に驚きでした!それだけ努力を重ねてこられた証なんだなと伝わってきました。

 

玲子さんは、「とにかく楽しく、気軽に遊佐刺し子に接して欲しい!」と。それを【遊佐刺し子教室】にて体現されていらっしゃいました!

ドキドキ緊張しながらフスマを開けると…そこには20名弱の方々が黙々と刺し子に集中している姿が。

ビギナーの方からベテランの方まで皆さんご一緒に。玲子さんを筆頭に遊佐刺し子ギルドの講師の皆さんがしっかりとサポートしつつ、生徒さん同士でも「こうした方が良いんじゃない??」とか、各々楽しそうに自分のペースで刺し子を楽しんでいらっしゃいました!

 

なかなかうまくいかず、玲子さんが助け舟を。生徒さん達は玲子さんの針さばきに釘付けです!!

指導しつつも、前より上達してるよ!!と嬉しい一言も飛んでおりました!こうやって皆さん上達していかれるのですね…

 

そしてベテランになるとこんな大作が!

 

遊佐刺し子教室の前身はパッチワーク教室をされていた玲子さん。

洋と和の斬新な組み合わせで新たな作品を生み出し、文部科学大臣賞をはじめとする数々の賞を受賞されています。

 

玲子さんが生み出した、円形の遊佐刺し子です。鳥海山とのコラボ作品!カラフルで、かわいい!!

遊佐刺し子の文様は、昔ながらのものから玲子さんがオリジナルでデザインした文様も含め、今現在156種類となるそうです。

 

この玲子さんの笑顔が好きなんですよねぇ~!

 

みなさん楽しそうに料理の話やら家族の話やらワイワイと。でも、手元の針もしっかり動いているのがまたすごい!笑

 

遊佐刺し子教室は毎週金曜日10:00~12:00まで、にぎわい創造館で開催されています!

 

こうやってテキストを見ながらでもよし。遊佐刺し子は製図をせずに糸を刺していくのが特徴です。縦線のみ描き、その線を基準として糸を刺していくようでした。いきなり難しそう!と思っても、刺し子に限らず何でもやってみないと分からないものですよ!努力すればするほど実りは自分に返ってきますからね!!

 

生徒さんの裁縫箱には必ずと言っていいほど遊佐刺し子の針刺しが入っておりました。購入されたものや自身手作りのものなど様々でした!

縫物・編み物、手仕事好きの母にプレゼントしたい!と思って玲子さんに聞いてみたら、「鳥海温泉 遊楽里」さんに置いてあるよ!との事。完全に見逃した…母の日も近いし、行って買わねば!!

ちなみにこの写真の文様は、「柿の花」という文様です。柿の花は正方形の形が一般的ですが、遊佐刺し子は独特で長方形なのだそうですよ!

 

 

そして今回の取材で最も印象に残った言葉があります。

『遊佐刺し子をやって世界を見た』

積極的に海外でも活動をされており、この言葉を聞いて、地道に積み重ねてきた活動が実を結んだ結果の壮大さや重みを感じた気がしました。

 

玲子さんの過去のお話しもとっても面白く、私と同じく都会から遊佐へUターンして地域づくりに携わっていた頃もあったそうです。玲子さんのような積極的な活動するにはまだまだ力量が足りないのですが、ちょっとした共通点があったことで、もっと私も頑張らねば!!と後押しして頂いたような気がしました。

 

最後にLLP遊佐刺し子ギルドの皆さんでパチリ!

手前左から代表の土門玲子さん、池田ちゑさん、後方左から土門コトさん、桜庭あい子さんです。

皆さん素敵な笑顔!!

 

素人の私を相手に、快く取材を引き受けて下さった玲子さん、そして遊佐刺し子ギルドの皆さん、遊佐刺し子教室・生徒の皆さん、ご協力誠にありがとうございました。

 

いつまでも遊佐刺し子が、後世まで受け継がれていきますように……