サーモン・リターンズ ~いつか帰るその日まで~①

2025-03-26

/ by toyomi

こんにちは、トミーです。
遊佐町に移住して半年が経ちましたが、ここ遊佐は驚くほど雪が少なく、毎朝「除雪しなくていい幸せ」をかみしめています。その結果、布団からなかなか出られず、ぬくぬくと夢の世界を満喫する日々。しっかり眠れているのはいいことですが、朝の布団との別れがつらすぎるのが最近の悩みです。

そんな私ですが、先日「NPO法人 いなか暮らし遊佐応援団」さんのお誘いで、「鮭稚魚放流会」 に参加してきました!
遊佐の水を知りたい一心で水採取に励んできた私ですが、今回は水とともに泳ぐ(?)鮭たちにもスポットを当てることに。

きっかけは、以前訪れた野沢ふ化場での出会い。
そこでお会いした 高瀬川鮭漁協生産組合の佐藤喜巳夫 組合長理事から、鮭の生態や放流の話を伺う機会を得ました。
せっかくなので、水採取のついでに鮭取材もしちゃおう!
ということで、鮭の生態、放流の意義、そして遊佐の水との関係について深掘りしてきました。

今回の鮭取材は、二回に分けて記事をUPしていきます。
「鮭の遡上その後??」 「放流ってどんな意味があるの?」
などなど、私の目線で鮭の世界をお届けするので、お楽しみに!


2024年秋、牛渡川に帰ってきた鮭。「10月から帰ってくるのは前期群の鮭だ」と、話してくれたのは佐藤組合長。
今期の鮭の遡上も、どうやら少なめのようです。

私が見学させて頂いた野沢ふ化場では、ふ化場の裏にある自噴井戸から水をポンプアップして鮭を育てています。
自噴井戸水の温度は15℃。凄い量の水がポンプアップされていて、鮭を卵から育てるには、綺麗な水環境を保つことが何より大事だということ。
その横には、野沢の中を流れる小川もあり、これもすべてが湧水だとか。

鮭のふ化作業の進化
~エッグ(卵)アートの世界へようこそ~

鮭のふ化作業には、昔ながらのやり方から、より繊細で技術的な進化が見られます。
かつては、鮭を捕まえて「グサッ!」とお腹を裂いて卵を取り出していた時代もありましたが、今では「それ、ちょっとカッコ悪いよね…」とばかりに、丁寧な手作業へと変化しています。
まるで、卵を扱うのが繊細なアーティストのようです。

受精の過程で、卵に精子をかける作業も、細心の注意を払って行います。
ちょっと手を滑らせて精子を不適切にかけてしまうと、その卵がダメになっちゃうんです。
そうなると、周りの元気な卵にも影響が出てしまう。
卵の世界で、ひとつのミスが大混乱を引き起こす大事件に!
「死卵率」を2%以下に抑えることが目標なんだとか。
まさに、鮭の卵は命をかけたアート作品みたいなものですね。

鮭の「ふ化器」という名のエッグ・ボックス

鮭の卵は、「ふ化器」という名の箱型の器に収められます。
これ、ちょっとした秘密の卵専用ホテルみたいなもので、卵たちが快適に過ごすための設備が整っています。
まるで、卵たちがここで「ふかふかの布団」にくるまれて、夢の世界に旅立つ準備をしているような感じです。

水温15℃で、ふ化までの3週間はまるで卵たちの「スパライフ」。
その後、1ヶ月ほどで卵がふ化して、ついに稚魚たちが顔を出すというわけです。
寝起きのまどろみから急に泳ぐ力をつけなければならないので、ちょっと慌ただしくもありますが、これで立派な鮭になるわけです!


3週間後、眼が出てきました!!!!真っ白のは、ダメだった卵です。
ミカンの腐食と一緒で、一個腐ると周りに伝染するのです。
遠心分離器を使って分別していきます。

この後、もう一度人間の目で確かめて選別していきます。
その後は、ふ化直前の卵を養魚地、または浮上槽に移します。

鮭のゆりかご、浮上槽と住み分け

現在、野沢ふ化場や箕輪ふ化場では、鮭の育成方法として「北海道方式」や「岩手式」と呼ばれる手法を取り入れてます。
それぞれの方法には特徴があり、環境や目的に応じて使い分けられていると聞きました。

 

1.北海道方式(養魚池方式)

特徴: 北海道方式では、鮭のふ化後の稚魚を養魚池で育てます。
ふ化した鮭の卵は、まずふ化槽でふ化させ、稚魚はその後、養魚池で成長します。

養魚池: 養魚池は、自然に近い環境を再現し、水温や水質管理が行われ、魚が健全に育つようにします。鮭は一定の期間、ここで育成され、その後、海に放流されます。

利点: 自然に近い環境で育成できるため、鮭が持つ本来の生態が反映されやすいこと、また大規模な生産が可能です。

養魚池に、作業員の皆さんが手作業で砂利敷きしてました。鮭のゆりかごとも言われてて、程よい隙間と光が入り込まない落ち着いた寝床を作り上げています。

2.岩手方式(浮上槽方式)

特徴: 岩手方式では、鮭の稚魚が浮上槽で成長します。
浮上槽は、比較的温かい水が供給される環境で、稚魚が泳ぎながら成長する仕組みです。

特徴: 岩手方式では、鮭の稚魚が浮上槽で成長します。
浮上槽は、比較的温かい水が供給される環境で、稚魚が泳ぎながら成長する仕組みです。

利点: 浮上槽方式は、魚の成長が早く、効率的に育成が可能です。
また、管理がしやすいので、養殖の効率が向上します。

主な違い:

育成環境: 北海道方式は自然に近い養魚池で育てるのに対し、岩手方式は浮上槽という人工的な水流環境で育てます。

成長速度: 浮上槽方式は、管理がしやすく効率的に成長させることができるため、より早く育てることが可能です。

育成方法: 養魚池方式は広いスペースで自然の流れを再現しながら育てるのに対し、浮上槽方式では人工的に流れを作り、稚魚の筋力や成長を促進します。

これらの違いは、地域の環境や目的に応じて選ばれることが多いです。

縦55cm×横90cm×奥行64cmの大きい浮上槽に、網目があって、卵が下に落ちて稚魚が浮いてくる様子。

鮭の育成方法、違いはどこに?

 

鮭の育成方法にも、なんとも興味深い違いがあるんです。
特に、ふ化後の育成方法には「北海道方式」と「岩手方式」という2つの流派が存在していて、まるで鮭の世界にも流派があるかのよう。まさに鮭界の武道ですね!

まず、「北海道方式」は養魚池でのんびりと自然に近い環境で育てる方法です。
ここでは、鮭たちがゆったりとした水の中で成長し、自然のリズムに合わせて生きる感じ。
まるで、遊佐町の湧水で育つ鮭たちが、リラックスしたスパのような環境で育っているかのようです。

一方、「岩手方式」は、ちょっとハードモード。
浮上槽という強い水流の中で稚魚がその流れに逆らって泳ぎ、筋力をつけながら成長するんです。
この水流、かなりの強さで、稚魚たちはまるで「筋トレしているみたい!」と感じていることでしょう。
鮭たちも「これが筋肉の源か!」って思っているに違いありません。浮上槽で泳ぐ鮭たちは、まさに水中フィットネスに励むインストラクターのようです。

この二つの育成方法、どちらにも独自のメリットがあるんです。
養魚池の「北海道方式」は自然な環境で鮭が自由に成長できるという魅力があり、逆に浮上槽の「岩手方式」は、筋肉をつけて活発に泳ぐ力強い鮭を育てるのに適しています。
まるで「どちらのスタイルも、鮭には必要不可欠!」といったところでしょうか。

そして、共通点として、どちらの方法でも育成される鮭たちは、同じ水で育っているという点。
遊佐町の湧水で、どんな育成方法を選んでも、スクスクと元気に成長していきます。
鮭界の流派が異なっても、最終的には同じ水で育っていくのが、なんだかほっこりしますね!

次回は、成長した稚魚の様子と放流ってどんな意味があるの?に関してUPしますね。
by トミー