蛇口から湧水?美味しい水の秘密①
こんにちは。トミーです。
遊佐町に移住して6か月が経ちました。町内の湧水や自噴井戸は神秘的で、水の音が心地よく、癒されるひとときです。遊佐町の皆さんにとっては日常的な存在かもしれませんが、移住してきた私にとっては、こんなにも豊富に水が流れ出ている様子に驚き、感動し、ただ流し続いているだけなのがもったいないと感じてしまいます。
私が生まれた新庄市では、幼い頃に井戸水を使っていました。大雨が降った翌日は井戸水が濁るため、市の水道課に水質検査を依頼し、OKが出てから使用していました。その後、水道設備が整い水道水を使うようになりましたが、井戸水に比べてまずい、ぬるいという印象が残っています。新庄から引っ越した後はウォーターサーバーを利用していましたが、遊佐に引っ越した際に蛇口の水を飲んだときの美味しさは忘れられません。そのため、ウォーターサーバーはすぐに解約しました。
この度、地域おこし協力隊の情報発信・水循環保全啓発担当に着任し、遊佐町の湧水について深く理解することが私の使命だと感じています。そのため、湧水や自噴井戸について調査を始めることにしました。最初は、各場所の水環境や風景を確認していきたいと思います。町が把握している湧水を北から順番に調べていくことにしました。スタートから少し時間が経ってしまいましたが、水散策を何回かに分けて投稿していきます。
令和6年11月20日(水) 大安吉日。今季1番の冷え込み1.8℃、天気は曇り、後に晴れ間が見えて10℃くらいまで上がりました。
最初の場所!!!ここは、吹浦地区女鹿集落にある『神泉の水(かみこのみず)』です。「里の名水やまがた百選」に平成27年度に認定されている場所で、町内ではメジャーな湧水スポットの一つです。集落の東側の山の中から湧き出して、この湧水を山ノ神より普請して引いてきたことから『神泉の水』と名が付いたとされています。
この湧水場は、地域の日常生活に根ざした貴重な場所であり、古くからさまざまな目的で利用されてきました。水場には「集水枡(しゅうすいます)」が配置されており、それぞれの枡(ます)には上流側から以下のような役割と決まりがあります。
- 第一の枡:飲み水用
澄んだ清らかな湧水を直接飲用するための枡です。 - 第二の枡:野菜洗い場
地元の新鮮な野菜を洗うための枡です。 - 第三の枡:軽い汚れの洗濯物用
軽い汚れの洗濯物を洗うための枡です。 - 第四の枡:汚れの多い洗濯物用
泥汚れや頑固な汚れ物の洗濯をするための枡です。
このように、湧水を最大限に活用するための使い分けのルールが、古くから受け継がれてきました。
また、この湧水場は地域の人々が集い、交流を深める場としても親しまれてきました。いわゆる「井戸端会議」の場として、日常のささやかな情報交換や会話が広がる憩いの場でもあります。また、この地区では1月3日にユネスコ無形文化遺産に認定された「来訪神・仮面仮装の神々」の1つである「遊佐の小正月行事」のうち「アマハゲ」が、この水場の坂を登りきった所、八幡神社で執り行われており、アマハゲの出発地点にもなっています。
続いて、『女鹿漁港の湧水』です。11月20日この日は風が強く、漁港に近づくのが怖かったため、春になったら改めて訪れてみることにしました。海岸線の近くまで行くと、水がぼこぼこと湧き出している様子が見られる場所があると聞いていました。また、遊佐の岩牡蠣が美味しいのは、鳥海山の伏流水のおかげだとも聞きました。遊佐町内には数多くの湧水が湧き出していますが、地下を通って海中にまで湧水が湧き出しているという現象には感動します。自然の豊かさとその恩恵を改めて感じさせられました。(写真は無いです…)
次に訪れたのは、吹浦地区滝ノ浦集落にある『滝の水』です。この場所は「里の名水 やまがた百選」に平成29年度に選定されました。この地区には他にも湧水がありますが、中でも最大の湧水がこの滝です。その存在は集落の名前「滝ノ浦」の由来にもなったと言われています。また、この地区では元日に行われる「アマハゲ」が、ここ大鳥神社で執り行われており、滝の水は出発地点にもなっています。
次に訪れたのは吹浦地区鳥崎集落の『鳥崎の水』です。この場所は道路を越え、圃場沿いの農道を進み、U字溝の蓋を奥まで進むと、大きな上蓋式U型側溝から大量の湧水が湧き出ています。かつてこの湧水は隣の集落にある湯ノ田温泉に引き込まれ、家事や料理に利用されていたそうです。また、山間部にはレンガ造りの湧水配水管が残されており、その歴史を垣間見ることができます。現在、側溝上部では国道7号線の工事が進んでおり、この湧水は昨年までこの場所で見られましたが、工事の影響で今後は別の場所に移設される予定です。鳥崎地区には他にも湧水がいくつかありますが、これほど大量に湧水が出ている場所は珍しく、驚きました。
この地区では1月6日に行われる「アマハゲ」が、三上神社で執り行われており、ここからあまはげ五匹が家々に繰り出していきます。
今日の最終訪問地は、『釜磯海岸』です。『滝の水』と同じく平成29年度に「里の名水やまがた百選」に認定されたこの場所では、海岸沿いの砂浜から海中へ湧水が湧き出しています。世界的にも珍しい貴重な場所とされています。砂浜にある湧水の湧き口は、日ごとにその場所が変わります。湧き口に足を突っ込むと、膝下まで入ってしまうほどの柔らかい砂地になっています(小さなお子さんは危険なので真似しないように注意してください!)。また、砂浜に見られる黒い粒々は砂鉄であり、湧水の影響で比重の重い砂鉄が黒い模様を描いています。この模様は海岸線に沿って続いており、非常に不思議な光景です。ただ、砂鉄がどこから流れ着いたものかはまだ解明されていません。神秘的ですよね。
遊佐町には、湧水や自噴井戸がまだまだ数多く存在しています。まずは46か所を調査しようと思いますが、新たな湧水が見つかる可能性があります。出来る限り多くの湧水を訪ね歩き、その魅力を見つけていきたいと考えています。日が短くなるこの季節、15時を過ぎると寒さが一層厳しくなります。今日はここまでとしますが、これで終わりではありません。次回の探索では、また新たな発見が待っていることでしょう。この町の豊かな自然と湧水に出会う旅は、まだまだ続きます。 トミー