来ちゃいなよ。ゆざまち

冬も怠けずにがんばりますから …!!

2018-12-26

/ by akira

 

 

遊佐町吹浦地区の女鹿、滝ノ浦、鳥崎集落には古くから伝わる伝統行事が残っている。

 

「鳥追い」、「ホンデ焼き」とともに行われる「アマハゲ」もそのひとつで、

これら一連の行事が、「遊佐の小正月行事」とされている。

 

アマハゲは、「ケンダン」という、藁(ワラ)を何重にも重ねた蓑(みの)を身にまとい家々をまわる。

怠け心を戒め、勤労を勧めるとともに、厄災を払い、無病息災をもたらす来訪神とされていて、

その顔や姿は集落ごとに異なるという。

 

… 来訪神?!

 

あの怖いイメージに結び付けられない…。

「荒ぶる神」とでもいうことなのだろうか?

どういうことか、全く想像できない。

 

集落内でのみ行われる神事ということで一般に公開はされておらず、

「見たいと思っていても、なかなか見られるようなものではない」ということなので、

もっと町にも慣れてから… と思っていた。

 

そんなある日、

特別に同席できるかもしれない!?

という、とてもありがたい知らせをいただいたのだった。

 

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最初に同席させていただいたのは滝之浦地区。

 

こどもたちがお年玉に喜んだその夜に、

 

ドン… ドン… ドン…

 

太鼓の音とともにやってきた。

 

 

ドンッ!

 

 

滝ノ浦のアマハゲは、手足が見えないほど大きなケンダンを身にまとい表れる

 

 

 

ドンッ… ドンッ… ドンッ…

 

と太鼓に合わせて大きな足音を立てはじめる…

 

 

土気色の顔で無表情。しかも一切声を発しないのだが、それが逆に気味が悪いほど怖い。

 

 

…と次の瞬間!!!

 

 

 

……!!

 

恐ろしいです… アマハゲさん…。

 

今年はもっとがんばります…。

 

そんな気持ちになった、緊張感のある年明け初日。

 

 

 

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次に同席させていただいたのは女鹿地区。

この地区では赤鬼、青鬼、ジオウ(翁)、カンマグレ、ガンゴジというアマハゲがやってくるらしい。

 

ドン…  ドン…  ドン…

 

… この音は … 。

どこからともなく聞こえてくる太鼓の音にドキドキしてしまう…。

 

「たぶん、今隣さ来ったさげ、そろそろでねあんが?」

「ほれ。こっちさ座ってれ」

 

ドン…  ドン…  ドン…

 

あぁ … 、太鼓の音が近くなってきた …

 

ん?

 

 

ホヮーーー!!  クヮーーーーー!!!

 

奇声を上げながら、ドドドドドッ!と ものすごい勢いで入ってきた!

 

うゎゎーーー!  いきなりっすか!?!?!?

ホントにビビりますって!

 

アマハゲさん!! けっこう本気でコワいですッッッ!!!

 

冬も怠けず、1年がんばりますからぁ~~…!!

 

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そんな声が届いたかはわかりませんが、

 

しばらくして、さっきまでのことが嘘のように

アマハゲさんたちは穏やかに、そして楽しそうにお家の方たちから接待を受けるのでした。

 

 

 

 

わたしも落ち着きを取戻し、改めてアマハゲさんたちを見てみると実に表情豊か。

角度によって笑っているのか、怒っているのか。

下向くと…、なんだかちょっともの悲しげ? 考え込んでる?

それもそのはず。

なんとこの集落では数十年前まで日山番楽という舞が残っていたそうなのだが、

そのお面が使われているらしい。

 

 

どうやらアマハゲさんたちは次の場所へ行くそうで、

お家の方と御餅の受け渡しをしていた。

 

 

 

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最後に同席させていただいたのは鳥崎地区。

この集落のアマハゲの面には岩倉、笠森、水壺という名前がついていて、

近くの山の名前が由来になっているそうだ。

 

 

ドン…  ドン…  ドン…

 

 

太鼓の音が近づいてきた…

 

やっぱりこの音は怖いなぁ…

 

 

 

うゎっ!!

こちらもいきなりですか!?!?!?

ホントにコワいって~~~…!

 

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家主さんとの様子を見ているととても穏やかそうなアマハゲさんたち。

本当は優しいんだということがよく分かる。

 

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アマハゲ行事の最期に行われるのが「ホンデ焼き」

(写真は鳥崎地区で行われたものを撮影させていただきました。)

 

アマハゲが身にまとっていた蓑を焚き上げるもので、

集落の方たちは、

ケンダンを編み、家々を周り、ホンデ焼きをするまでの一連の流れをアマハゲ行事としているそうだ。

 

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「怠け心を戒める」という勝手なイメージが強かったアマハゲ行事だったが、

間近にいると、確かにそういった一面もあるとは思うが、

そんな一言では表せない行事だということを感じることができた。

 

例えば、

それぞれの集落でも、アマハゲが去った後に残った藁には意味があるようで、

… たくさん藁が落ちると五穀豊穣になる

… 一晩はそのままにしておいて、次の日に集めて焚き上げる

… 福の神とされ神棚に供えられる

などと言われている。

また、釜戸で煮炊きをしていた頃などは、

七草粥の炊き付けとしても使われていたらしい。

 

アマハゲとの餅の受け渡しについても、

お家の方から餅を2つ渡され、お返しに別の餅を1つ置いていくらしく、

そこにも大事な意味が込められているそうだ。

 

そんな話を聞きながら畳の上に残った藁を見つめていると、

「お守り代わりに持って行げ」とありがたいことばをいただいた。

 

 

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遊佐の小正月行事(アマハゲ)は、

国指定重要無形民俗文化遺産に指定されていることもあり、

以前から注目されていた行事ではありますが、

2018年には「来訪神 仮面・仮装の神々」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

これも、地域や集落のみなさんが、この貴重な伝統文化を現在まで伝承してきてくださったからです。

 

世界を代表する文化のひとつとして認められたことで、

「見学したい!」

「どこで見られるの?」

という問い合わせも増えているようです。

 

ですが、

各集落で大切に受け継がれてきた行事だということを忘れないでもらいたいです。

(わたしの場合は、偶然にも幸運が続いたというだけで、たいへん貴重な経験をさせていただいたと思っています。)

 

誰かに見せるために続けられてきたものではないということや、

年に1度の大切な神事だということへのご理解もお願いします。

 

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下記リンクページもぜひご覧ください。

 

国指定重要無形民俗文化財 遊佐の小正月行事(遊佐町役場より)

 

アマハゲ行事に関する注意事項について(遊佐町役場より)

 

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おぉ、この集落でもアマハゲはこどもたちと仲良くしているみたいだ。